東京五輪決勝で侍J相手に好投 鷹マルティネス、来日4年目で大きく変わった点を探る

ニック・マルティネスの年度別成績詳細【画像:パ・リーグ インサイト】
ニック・マルティネスの年度別成績詳細【画像:パ・リーグ インサイト】

2018年は打たせて取る投球で10勝、今季は奪三振率が大幅にアップ

 ここからは、セイバーメトリクスの分野で用いられる指標をもとに、マルティネスの投球がどう進化したのか、より具体的に見ていきたい。

 2018年の奪三振率は5.18で、打たせて取る投球を主体としていたことがわかる。そのスタイルを支えていたのは、与四球率2.23を記録した制球力。奪三振が少なくとも安定した投球を実現していた。

 しかし、2020年は与四球率が4.74と上昇し、それに伴って防御率も3.51から4.62と1点以上も悪化。一時期リリーフに回ったこともあってか奪三振率は7.82に向上したが、投球の根幹を成していた制球力が失われてしまったことが、同年の不振の主要因となったことは確かだろう。

 今年の数字に目を向けると、与四球率は2.03と、2018年を上回る水準に向上した。加えて奪三振率も9.13とイニング数を上回る奪三振(71回72奪三振)を記録。結果として、奪三振を四球で割って求める、制球力を示す指標の「K/BB」も昨年の1.65から大きく向上して4.50に。一般的に3.50を上回れば優秀とされる中で、大きくその値を上回っている。

 被本塁打率も顕著に改善が見られる部分の一つだ。2018年は0.891。四球による走者を許す割合が低かったぶんだけ、被本塁打が大量失点につながらなかった面もある。0.947だった昨年は防御率も大きく悪化していることからも、決して軽視できない要素であることがうかがい知れる。

 そんな中で、2021年の被本塁打率は0.634と目に見えて改善されている。それが防御率の向上にもつながっているというだけでなく、外野フェンスが高い札幌ドームから、ホームランテラスがあるPayPayドームに本拠地が変わったにもかかわらず、被本塁打のペースが大きく減少しているという点も特筆すべきだろう。

 もう一つ、本塁打を除くインプレーの打球が安打になった割合を示す指標で、一般的に運が占める要素が強いとされる「BABIP」についても見ていきたい。通常、特定のシーズンに大きく成績が向上した投手のBABIPを見てみると、その他の年に比べて値が低くなっているケースが少なくない。

 マルティネスの場合は好成績を残した2018年と2021年はそれぞれ.288と、平均値の.300よりもやや低くなってはいた。しかし、NPB通算での.291という値とは、ほぼ差のない数字でもある。また、2018年よりも2021年のほうが成績が大きく向上しているにもかかわらず、両年のBABIPが同じ数値であるという点が、運に左右されない要素によって投球内容が向上していることを示してもいる。

球速がアップしたツーシーム、チェンジアップととも効果的な球種に

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