73歳指揮官が「感無量」 専大松戸に甲子園初勝利を運んだエースの“攻撃的投球”
夏までに磨いた内角へと投げ切る投球「春は自分の失投で負けた」
指揮官も深沢の快投には「インコースを上手く使いながら、完璧な投球をしてくれた」と最敬礼。試合途中までは継投が頭にあったが「あれだけいい投球をしてくれたら、変えどきが難しくなりますよね。7回からはもう、深沢に任そうと考えていました」。この春は、2番手以降の投手育成にも心を砕いてきたが、この日の背番号1の姿には、腹をくくらせるだけのものがあった。
今春の選抜、1回戦で中京大中京に0-2の完封負けを喫した。持丸監督は「中京大中京とあんな試合ができたってみんな褒めてくれたけど、違う。負けたんでは一緒だろう」と、すぐ夏を向き動き出した。選手の思いはより強かった。深沢は「春は自分の失投で負けた。夏の県大会の決勝でも、内角の甘い球を本塁打された」。甲子園までの短い間に、内角へ投げ切る力を身につけるべく取り組んだ。
ブルペンで、左打者にベースへ近寄ってもらい、それでも内角へ投げ切る練習をした。コースいっぱいに投げればストライクゾーンを使いきれると思っていたが、持丸監督からの「もう1個バッター寄りに投げたほうがいい」という言葉に気づかされた。打者に当てるくらいの気持ちでなければ、本当に攻めきることはできないのだと。右打者に対しても一緒だ。右打者の顔に向かっていくような獰猛なボールなら、リスクが大きいとされるシュート回転も使えるものになる。「シュート回転しても、いい回転のシュートボールならOKだ」という老将の言葉が、力になった。
初めて甲子園で味わった喜び。「春の負けがあっての勝利かな」と深沢は言った。悔しい記憶さえも、意味のあるものに変えた快投だった。次は2勝目へ。部の歴史を変える夏は、まだまだ続く。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)