ピンク色のキッチンカーでカレー販売 元近鉄・大石大二郎氏が歩む第2の人生
「障害者の社会参加は、親御さんの助けにもなります」
キッチンカーの存在を知ってもらおうと、大石さんが自ら運転して出張する時もある。夏は地元の名産・イチゴを使った自家製スムージーをメニューに加えるなど、試行錯誤を続けている。
政府は障害の有無にかかわらず誰もが仕事を通じて社会に参加する「共生社会」を掲げて、今年3月に障害者の法定雇用率を引き上げた。民間企業には雇用する従業員のうち、障害者が2.3%以上になるよう義務付けられている。厚生労働省によると、民間企業の実雇用率は9年連続で過去最高となる2.15%。人数も前年より1万7000人余り増えて、57万8292人と17年連続で最多を更新した。
数字を見れば障害者の雇用は広がっているが、政府の目標値には届いていない。また、企業の規模によって格差がある。従業員が1000人を超える大企業では実雇用率が2.36%だったのに対し、100人未満の企業では1.74%にとどまっている。日本企業は99%以上が中小企業。大石さんは障害者雇用の厳しい現実を口にする。
「実際に障害者が一般企業へ就職するのは、なかなか難しい状況です。国は障害者の採用を企業に働きかけていますが、受け入れ態勢を取っている企業は少ない印象を受けます。障害者雇用について考える余裕がない企業が多いのではないでしょうか」
障害者雇用は経済面のサポートだけではなく、やりがいや生きがいも生み出す。「障害者の社会参加は、親御さんの助けにもなります。金銭的にも精神的にも大変な思いをされている方は少なくありません」と大石さん。事業所の名前にした「オルオル」はハワイ語で「心地良い」という意味がある。心地よく暮らせる社会の実現へ。ピンク色のキッチンカーには願いが込められている。
(間淳 / Jun Aida)