なぜ元鷹ドラ1は豚肉を売る? わずか1年間でスコアラーを辞め、球界を離れた理由

「プロ野球選手全員そういう風だと思われたくない」

 今の業務も多岐に渡る。“社長”的な立場だが、「まともに社会人もやったことがないのにおこがましい」との理由で、肩書きは野球に引っ掛けて「営業部キャプテン」。精肉のカットや包装、新たな販路拡大のための営業活動、商品の配達など、事務以外のほぼ全ての業務を自ら行う。今は手一杯だが、将来的には生産の分野にも力を入れたいとも考えている。

 慣れない新たな環境に「作業も大変ですし、メンタル的にもしんどいことはあります」と漏らす。そんな自分を突き動かすのは“元プロ野球選手”としての思い。「僕が今ここで、弱音を吐いていたら『プロ野球選手だから、社会がキツいんだろ』と言われてしまう。僕1人だけがそう言われるのはいいんですけど、プロ野球選手全員そういう風だと思われたくないので。僕はみんなの代表だと思って、彼らの顔を思い浮かべながらやっています。僕がちゃんとして『やっぱり底力あるんだな』と思われたらいいですね」という。

 事業を開始して以降はソフトバンクの後輩である柳田悠岐外野手や千賀滉大投手、中村晃外野手らがSNSを通じて「一志SPポーク」をPRしてくれた。「本当にありがたいですし、嬉しいですね。やっぱり彼らの影響力って凄い。僕も彼らのことが大好きですし、毎日会っていたのが当たり前だったんですけど、こうやって離れてみるとやっぱり寂しいなと思います」。盟友たちと離れ、地元で奮闘する江川氏を後輩たちも手助けしようとしている。

 今後の夢を「やっぱり1人でも多くの人に、この美味しい豚を知ってもらいたいという思いはすごくあります。まだ認知度も低いですし、まずは三重県で一番美味しい豚として多くの人に食べてもらって、ゆくゆくは日本一の豚にしたいです。牛肉だと松阪牛とか佐賀牛とか、いろいろありますけど、豚肉でそういうブランドにしたいです」と言う江川氏。故郷で母のために歩み出した第二の人生。多くの人に「一志SPポーク」を知ってもらうため、今日も汗を流している。

【実際の映像】元ドラ1が豚肉を切る… 江川智晃さんが自ら豚肉を捌く実際の作業風景の映像

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY