なぜ赤星憲広氏が投手を指導? 日本ハム新庄監督が「1番教えて欲しかった」こと

日本ハムの選手に指導を行った赤星憲広臨時コーチ(左手前)【写真:羽鳥慶太】
日本ハムの選手に指導を行った赤星憲広臨時コーチ(左手前)【写真:羽鳥慶太】

日本ハム投手陣に与えた気付き 二刀流上原はダブルで受講

 稀代の盗塁王がバッテリーに開いた講座は、抜群の化学反応を生んだ。赤星氏は「珍しいとは思いますけど、指導する立場になるなら絶対に必要だと思っていた。いい話ができた」。自分がどんな投手、捕手からは走りやすかったのか。逆にどんなバッテリーが走りにくいのかと、現役時代は企業秘密だったはずの部分まで伝えていった。

「クイックの練習をみんなしますけど、ただしておけばいいわけじゃない。クイックが早いから牽制をしないという投手がいるんです。僕はクイックが速いだけの投手は、めちゃめちゃ走りやすかった。逆に遅くてもタイミングを変えられると、なかなか走れないんです。キャンプでも普段は投手と野手の練習って別なので、これはなかなか伝えられない」

 通算82勝の武田勝コーチは現役時代、決して走者対策が巧いほうではなかった。赤星氏の話には新たな発見があったという。「ただクイックするだけでは走られる。全部クイックで投げるより、いろんなタイミングで牽制して、走者にプレッシャーを与えるのも仕事だという話でした」。さらにこの場では捕手にも、構えたりコースに寄ったりするタイミングひとつで、走者は走りやすくなることを伝えた。

 また、現在“投打二刀流”での起用を目指した練習に取り組む上原は、野手としても投手としても赤星氏の講義を受けた。左腕の上原は、マウンドに立つと一塁走者と正対する。「もし投手と目があったら、どう思いますか」と質問すると、赤星氏の回答は「どれが正解かと言うより、表情を読み取りやすいよね」というもの。走者のスタートは、どれだけ投手のクセを読み取れるかにも左右される。表情はその大きなヒントになりうる要素だ。

 赤星氏の現役時代、圧倒的に走りにくかったチームは中日だという。正捕手の谷繁が、バッテリーに「クイックが下手なら下手なりに、間を変えろ」と指示していたからだ。「(山本)昌さんだけは別でした。『邪魔だから走ってくれ』と言っていた」と冗談を飛ばした赤星氏は、真顔で続けた。

「バッテリーがそこまでやっていたから、中日は強かった。僕は今、誰もが注目している日本ハムに関われて良かったです。今後は(出身の)阪神と同様に気になると思う」。レッドスターの教えを消化し、1点を大切に守るチームに変わることができるだろうか。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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