鷹・甲斐拓也が教えてくれた東京五輪の舞台裏 捕手という生き物の思慮深さと献身

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

「もしもし甲斐です」は投手を自身の準備に集中させるための心配り

 甲斐選手といえば、ノックアウトステージ初戦のアメリカ戦でサヨナラ打を放ち、投手陣をリード面でも引っ張った。その働きぶりはMVPに選ばれてもおかしくないものだった。また、ブルペンに電話して投手と話す「もしもし甲斐です」はネット上でも話題になり、ベンチでしきりに目を通していた手書きのノートの存在も注目を集めていた。

 これまで語られてこなかった詳細な真相については、後日、別の記事で伝えさせてもらうが、そこに行き着くまでに費やされた準備の時間の膨大さに驚かされた。その準備はペナントレースが中断に入ると、すぐに始まり、連日、相手チームの全選手の特徴やホットゾーンを事細かに記したノートを一人一人、手書きで書き続けた。侍ジャパンの活動期間中、練習と食事以外の時間はほぼノートと映像と向かい合った。

 あの「もしもし甲斐です」にしてもそうだ。五輪ではイニング間の交代時間が90秒に制限されていた。大きな“後悔”をする出来事もあった。マウンドに上がってから、投手が自分の準備のために時間をめいっぱい使えるようにするために、何か省けるものはないか。その1つとして思いついたのが、捕手との会話の時間だった。ブルペンにいるうちに話を済ませてしまえばいい。横浜スタジアムのブルペンは外野にあったため、直通の電話を使うという手段を取ったのだった。

ソフトバンクの投手が甲斐に感謝するのはその心配りの証

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY