怪我がかき立てた研究心 ダルビッシュが取り組む新フォームのカギを握る左手の動き
53球中28球がストレート、最速156キロをマークした
左股関節が癒えたことで、しっかりと蹴った軸足からの体重が乗った左足を蹴る理想のフォームを求め、重ねた試行錯誤から生まれた新型フォーム。右足の蹴りと左足の蹴りがしっかりと見て取れることから迷わずに「躍動的」という表現になった。
実は、新フォームでいちばん気になっていたのが、投球の一連の動作を締めくくるグラブをはめた左手の動きだった。昨年より体の後ろへよりシャープに引き戻される動きは、先の説明の中にちゃんと答えが隠されていた――。
体重が乗った軸足から体は並進し、踏み込む左足に体重移動がスムーズになったことで、腰の回転速度が上がる。それに伴い、振る腕にはこれまでよりも強い遠心力が働き、蹴り上げた左足の反動は最後、左手へと伝わって体の後ろへとシャープに引き戻されるという動きを見せる。これは体の回転力の自然な流れが出来上がっている証でもある。
この日の投球で軸にしたのは、全投球の52%を占めた最速97マイル(約156キロ)のストレート。パドレスのアドバイザーを務める野茂英雄氏もスタンドから熱視線を注ぐ中、質の高い28球を繰り出した新型フォームにも、ダルビッシュは反省点を挙げた。
「球速は出ていますけど、自分の中では、ちょっと(体の)開きが早くなったり骨盤が回るのがちょっと早くなっていた感じがしてたので。そういうところですね。安定感をちゃんと持って長いイニングを投げられるようにしたいと思います」
ボブ・メルビン監督は昨季にノーヒッターを達成しチームトップの11勝を挙げたジョー・マスグローブとダルビッシュを天秤にかけているが、ここまでオープン戦はともに2度の登板でダルビッシュの安定感はマスグローブを上回っている。発表を「近々に」とする指揮官の決断はまだ先になるのだろうか。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)