佐々木朗希「伝説の105球」 異次元の完全試合を紐解く数々のデータとは?
“三振しない”吉田正封じに有効だったカーブ
しかし、投じられたカーブ3球のうち2球は、4回に吉田正尚に投じられたものだった。吉田正は試合開始前の時点で14試合に出場し、三振はわずかに1つ。昨季はシーズン全体で喫した三振が26個のみと、極めて三振が少ない打者として知られる。
そんな吉田正に対して、佐々木朗は第1打席でフォークを振らせて3球三振。続く第2打席はカーブを2球続けて追い込み、4球目のフォークで再び空振り三振を奪った。投球の引き出しの多さを見せた上で、7回の第3打席は膝元の速球で見逃し三振。少ない投球数でもアクセントとなった緩い球は、NPB屈指の好打者封じにも寄与していた。
割合を見ても、この日の佐々木朗は速球を最大の武器としていたようにも感じられる。だが、アウトを奪った27球の「結果球」における球種を確認すると、その傾向は大きく異なってくる。直球で奪ったアウトは8つにとどまり、結果球全体の7割をフォークが占めた。試合全体を通じて投じたフォークの数は35球であり、そのうち半分以上が結果球となっている。
そして奪三振を記録した球種においては、この傾向がより顕著となっている。速球で奪った三振はわずかに4個で、19個の三振のうち約8割をフォークによって記録した。終盤に至るまで160キロ以上を計測していた速球以上に、バットに当てることすら困難だったフォークが打者を苦しめていたことがうかがえる。