元楽天の首位打者が説く“素振り”の重要性 子どもが飽きずに続けられる方法とは

楽天などで活躍した土谷鉄平氏【画像:(C)PLM】
楽天などで活躍した土谷鉄平氏【画像:(C)PLM】

素振りができて「初めて投球への対応が生まれる」

「プロ野球選手になりたい!」そんな子どもを持つ保護者に、中日、楽天、オリックスでプレーした鉄平さんが「プロ野球選手になる方法」を伝授。アカデミーコーチをした経験を基に「鉄平式プロ野球選手の育て方」を全6回に分けて語ります。第3回のテーマは「素振りが苦にならない方法とは?」。2009年に首位打者を獲得した鉄平さんが素振りの重要性を説いてくれました。

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 今回は、小学から高校時代まで実際に行っていた練習方法や、プロに必要な技術について打撃を中心にお話します。小学生の頃は少年野球チームに所属していました。全体練習の他に自宅で日課にしていたのはシャドーピッチングと素振りです。今のように打撃に関する情報や動画があふれている時代ではなかったので、とにかくバットを振っていました。技術や練習方法については人それぞれ考えがありますし、時代によって変わっていく部分があると思います。私自身はプロになってからも、アカデミーで子どもたちに野球を教えるようになった今も、打撃の基本は素振りにあるという考え方は変わっていません。

 素振りは古きよきもので、国語を学ぶ時に平仮名を書けないと漢字に進めないのと同じ認識です。素振りで強くバットを振ったり、思い通りにバットを操れたりできなければ、ティー打撃やフリー打撃をしても、理想の打球を飛ばせません。打撃は非常に難しい作業です。素振りができるようになって、初めて投球への対応が生まれてきます。素振りでバットを操作できなければ、動いている球を打ち返す時にやるべきことが増えてしまうので、結果が出にくくなってしまいます。

 厄介なことに、素振りはとても地味で継続するのが大変です。景色は変わりませんし、誰にも応援されません。ある程度の時間がかかるので、飽きない工夫が必要になります。私の場合、小学6年生の時にイチローさんが振り子打法で一世を風靡しました。イチローさんに憧れて左打者に転向しました。初めは全然打てませんでしたが、イチローさんのようにヒットを量産できる選手になりたいと思って素振りを続けました。

 スポーツニュースが始まる時間になるとテレビの前で待機して、イチローさんの打撃を食い入るように見ていました。打ち方を目に焼きつけて、イメージしながらバットを振りました。自分がかっこいいと思っている動きを真似て、自分の世界に浸っているので、素振りが苦にならなくなりました。誰かの真似をするのは絶対ではありませんが、1つのヒントをつかむには非常に有効な方法だと思います。今の時代であれば、素振りを動画で撮影するのがおすすめです。間違いなく自分のイメージと実際の動きにはギャップがあります。思ったよりもバットが下から出ている、誰かの真似をしているつもりが全然違うというように、自分の動きが確認できます。

 素振りの最初のステップとしては、立ち方やバットの握り方がありますが、ある程度野球をやっている子どもには「まずはバットを思い切り振ろう」と伝えています。出力のところです。人と比較するのではなく、自分の中で力強く振れるようにします。実際に打席に立つと空振りしたくない気持ちが働いて、どうしてもバットに当てにいくスイングになってしまいます。バットを強く振る動きを素振りで体に覚えさせることが大切です。理想のスイングを繰り返す再現性も大事ですし、コースや高さに応じた素振りも有効ですが、まずは、自分が一番強く振れるところをつくってください。力強さを欠くスイングで色んなコースや高さを通過するだけでは、試合でいい打球は打てません。ど真ん中で構わないので強く振れるようにして、その後に体より少し近いところや遠いところを力強く振る練習を段階的にやった方が良いと思います。

野手でプロを目指す場合に「欠かせない」と考える打撃のポイント

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