佐々木朗希を「そりゃ呼びたい」 侍ジャパン・吉井投手コーチが語る成長の過程
天性のフォーム守る説得「プロで1球投げるまでは、今のままで行こうや」
吉井氏は長身投手に縁がある。引退直後、日本ハムでの1回目の投手コーチ時代にダルビッシュ有投手(現パドレス)と出会い、2016年に戻ってくると大谷翔平投手(現エンゼルス)がいた。佐々木朗を含めた3人の共通点をあえて挙げるとすれば「みんな好奇心、向上心が強いところかな」と笑う。
「自分のやり方で上手くなりたいと思っている。コーチの言うことも聞いてはくれるんですけど、自分で『そうだな』と思ったことしか取り入れないとか。上手いと思いますし、それでいいんです」
そして、投球や体形は三者三様だ。比較的手が短いダルビッシュは、最初から上手く使えていた。そして大谷は手足の長さを、ようやく投球で上手く使えるようになっているという。制球力の向上がその証拠だ。そして佐々木朗は、入団当初から手足を思うように扱えていた。長身投手が大成するための準備を、高校までに整えていたと言える。“神様のプレゼント”のような投球フォームだった。
「だから、フォームを変えちゃだめだと思いました。でも、2年目の春のキャンプで、本人が変えてきたことがあって……。説得して、戻してもらいましたよ。『プロで1球投げるまでは、今のままでいこうや』って。なかなか頑固なので、いろんな人に話してもらったりして時間はかかりましたが」
実は、昨季の1年間はフォームを元に戻すための「修正期間」だったというのだ。それでも後半戦に1軍昇格して3勝2敗、防御率も2.27という好成績を残し、投球イニングを上回る68個の三振も奪った。そして「今、1年目の仕上がった時にやっと戻ってきたかなという感じなんです。やっと自分本来の感覚があるんじゃないかな」とも。
来春に開催予定のWBCで投手陣を預かる吉井氏は、佐々木朗の代表入りについて「そりゃ、呼びたいですよ。日本のエースになる可能性もある」と即答するほど惚れ込んでいる。100%を出せる体の力が備わった時、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。吉井氏も「まだまだ良くなる、としか言いようがないな」と、完成形を楽しみにしている。
(羽鳥慶太 / Keita Hatori)