内野手出身がなぜ“外野守備コーチ”? DeNAがファームから球界へ吹き込む新風
投手から外野コンバートした勝又温史選手の成長を実感
ゼロからのスタートだった。柳田コーチはまずは選手の「体の動き」に着目した。ボールの追い方、切り返し、スローイング……トレーナーと話をして、スムーズな動作を手に入れるための練習メニューを決めて、取り組んだ。
自分が“外野未経験”であることを隠すことはしなかった。入団間もない若い選手にもこれまでどのように守備を教わってきたのか、考え方を聞いた。“外野コーチ”1年目は、高校(福知山成美)の後輩でもある桑原将志外野手がファームキャンプスタートになったため、若手の手本になってもらうことを依頼した。コーチとしても、勉強させてもらった。
その学びの姿勢に仁志ファーム監督も感じるものがあった。現役時代から引退後も多くのコーチを見てきたが、柳田コーチのきめ細かい指導はこれまでのコーチに引けを取らなかった。
仁志ファーム監督 「元々、“わからない”という所からスタートをしているので、いいと思えることを何でも吸収しようとしている。専門のコーチにも疑問があれば、素直に聞くことができるし、適正な動作というものが何かを聞き、練習に取り入れる。何と言うか、“つまらないプライド”が(柳田コーチには)なかったですね」
足元を見つめ、偉ぶらない。そして選手との対話を大事にしていた。練習メニューにフリスビーを取り入れ、目で目標物を捉えるトレーニングをした。他にも新しい発想はいくつも出てきた。仁志ファーム監督は柳田コーチの指導について「単なる技術練習ではなく、トレーニングを入れながら、その動きをきちんと獲得できるかという考え方で指導をしている」と絶賛。スポーツ科学の観点で、理に適ったものを導入していることにも目を細めていた。
試行錯誤しながらも、柳田コーチは手応えをつかんできた。選手が試合でファインプレーを見せてくれた時よりも「選手の口から『こういうことができるようになりました』『少しずつ(いい方向に)変わってきた気がします』という声を聞くことができた時が嬉しいです」と充実感が湧くという。
今年、投手から外野にコンバートした育成の勝又温史外野手も指導をする一人。打撃ではイースタンリーグで5本塁打(6月1日時点)を放つなど好成績を残しているが、守備も着実に上達している。ゼロから外野手として作り上げる選手の活躍は、柳田コーチにとっても非常にいいモデルケースとなっている。
「最初は“素人”でも、送球も良くなりましたし、打者を見ながら一歩目を切れるとか、考えながらプレーができるようになりましたね。意見を交換したり、教えたことへのフィードバックがあったり……僕らは同じような(新たな挑戦という)境遇にあるので、お互いにプラスしかないですよね」