知的障害児にとって野球は難しいスポーツなのか 合同練習会が投げかける疑問
発足から1年3か月経った「甲子園夢プロジェクト」は徐々に規模を拡大
昨年の東京パラリンピックや今年の北京パラリンピック、また昨今の社会におけるSDGsに対する積極的な取り組みなどもあり、日本でも“誰もが生きやすい社会”の実現に向かって動き始めている。実際にパラリンピアンたちの活躍を映像などで目にし、先入観を覆されたり、人間の持つ可能性の大きさに驚かされたりした人たちも多いだろう。
知的障害がある子どもたちに野球のルールは理解できないに違いない――。大人たちが持ちがちな、そんな先入観に一石を投じているのが、昨年3月に発足した「甲子園夢プロジェクト」だ。特別支援学校で30年以上も教鞭を執る久保田浩司さんが「知的障害のある野球好きな子どもたちに甲子園を目指す道を示したい」と立ち上げたプロジェクトは当初、11人のメンバーで始まったが、1年3か月後には32人にまで拡大した。
5月28日には都立第五商業高校グラウンドで、同校硬式野球部と合同練習会を開催。この日は北海道から京都まで特別支援学校に通う生徒や卒業生ら24人の野球好きが参加した。知的障害児はルールの理解が難しい、硬球でのプレーは危険を伴う、などといった理由で、特別支援学校には硬式野球部はもちろん、野球部があることはごく稀だ。だが、知的障害のあるなしに関わらず「野球が好き」という気持ちに変わりはない。久保田さんは旧知の仲でもある、元ロッテ・荻野忠寛さんらの協力を仰ぎながら、オンラインでの実施も含め月1回程度のペースで練習会を開催している。
この日の練習会は指導者講習会も兼ねていた。プロジェクトのスタッフに助言を受けながら、子どもたちの練習会をサポートした3人の受講者は「言葉で伝わらなくても身振り手振りを交えれば理解できることが分かった」「能力の高さに驚いた。楽しそうな様子が何よりもよかった」と新たな発見を得た様子。もちろん、障害の程度により必要とするサポートはそれぞれだが、練習会の様子を見れば「知的障害児には野球は難しい」という先入観を取り払うべきことは一目瞭然だ。