「なめられては困る」 ダルビッシュ有がメッツ相手に“ケンカ投法”実行したワケ

昨季終盤の“テスト”経て、投手板踏む位置を三塁側へ変更

 股関節を痛めた昨季は、対左打者に苦しむシーンが中盤以降に増えた。左打者に3本塁打を浴びた9月13日(同9月14日)のジャイアンツ戦では、プレートの真ん中に置いていた軸足を中盤でそっと三塁側へと移した。しかし、活路は見いだせなかった。「左には内角のツーシームが投げづらく感じるし、スライダーのバックドアは引っかけた感じで。そこでやめました」。今季、体はほぼ万全だ。「去年とは状態がまた違うので、今は三塁側で投げていってもツーシームを内から曲げることができる」と自信を深める。

 足場の移行は右打者にも有効になった。

 4番に座る右の大砲アロンソには2回の打席で死球を与えたが、右手に当たった95マイル(約153キロ)は「普通に避ければデットボールの球じゃないしスイングしていた。状態はいいって思いました」と切れ具合を確認できる1球となり、「自信を持っていきました」と振り返っている。

 まとまりを見せる速球にスライダー、ナックルカーブとスローカーブ、スプリット、そして7球連続で投じ凡打に仕留めたカッターを織り交ぜた100球で6月初勝利につなげた。導いたのは、今季から正捕手を務めるノラだった。攻撃中のダグアウトでも意見交換を重ねダルビッシュは捕手目線からのアドバイスを噛み砕いて新たな回のマウンドに向かった。

「配球に関してはいちばんよかった。スローカーブがいっぱい使えましたし、スプリットともいいところでいい落ち方をしたのが結構あったので。体の状態としてはいちばんではなかったけど、ゲームプランではいちばんだと思います」

 今季11試合目の登板で対峙した強力メッツ打線を封じ、8度目のクオリティ・スタート(6回以上を投げ自責点3以下)を決めたダルビッシュは、プレーオフで激突する可能性もある相手に、はばかることなく言った。

「なめられては困る」

 ダルビッシュ有の凛とした表情が変ることはなかった。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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