元楽天・鉄平さんが振り返る現役生活 9割5分が“苦しみ”も何にも代え難かった喜び
トップレベルにいる人の共通点は「負けず嫌い」
プロを目指す子どもたちへのアドバイスとしては、まず第4回のテーマでお話した「ご飯を食べる」こと。人間は酸素を吸って成長する草木と違って、食べたものでしか大きくなれません。技術的にプロになる力があっても、体を大きくできずに諦めた人を見てきました。もう1つは、できないことに悔しさを感じてください。小、中学生の時は上手くいかないことや人に負けることがいっぱいあるかもしれませんが、「上達してやる」という気持ちを忘れないでほしいです。その気持ちの強さが、将来の伸びしろにつながります。どんな分野でもトップレベルにいる人の共通点は「負けず嫌い」だと思っています。
私自身も子どもの頃、ものすごく負けず嫌いでした。打ったり走ったりするのは上級生相手でも負けたくなかったですし、並走してランニングする時に、隣の選手より少し前を走っていたくらいでした。プロでは感情を表に出さないタイプに見られていましたが、元々は気持ちを全面に出す選手でした。高校最後の夏の大会で、気合いを入れ過ぎて力んでしまい、最後の打者になってしまった苦い経験から、気持ちをフラットに保たないとパフォーマンスに影響が出ると悟りました。ずっと負けず嫌いをプレーにも出した上で、失敗を経てブレーキをかけるようにしたわけです。
プロに入ってから交感神経と副交感神経の割合を調べたことも、感情をコントロールする考え方につながりました。一般的に交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキの役割と言われています。どちらが、どのくらい優位に働いているか調べた結果、私は80%が交感神経でした。ほぼずっとアクセルを踏んでいる状態と言われました。その時に合点し、自分は日頃からちょっとブレーキを踏むくらいでパフォーマンスを発揮できると確信しました。
全6回に渡って、「プロ野球選手のなり方」をテーマにお話してきました。これまでの自分の経験や考え方を整理する機会になりましたし、たくさんのご意見やご感想をいただき貴重な経験になりました。ありがとうございました。子どもたちがプロを目指すと言った時、保護者の方々には食事や送迎など、できる範囲でサポートしていただけたらと思います。そして、笑顔で「頑張れ」と声をかけてください。この連載が皆さんの参考になり、野球を楽しむ親子が1組でも増えたらうれしいです。
○土谷鉄平(つちや・てっぺい) 1982年12月27日生まれ、大分県大分市出身。津久見高校から2000年ドラフト5位で中日に入団。2006年に楽天へ移籍し、2009年に打率.327で首位打者に輝いた。オリックスへの移籍を経て2015年限りで現役引退。引退後は楽天アカデミーコーチ、2軍外野守備・走塁コーチ、1軍打撃コーチを務めた。現在は球団を離れ、野球解説者として活躍の場を広げている。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)