山本浩二監督に「4番を外してください」 新井貴浩が“苦悩”を経て「化けた」ワケ
山本監督に「チームに迷惑をかけたくありません。4番から外して下さい」
当時26歳の新井はシーズン途中、打撃コーチの内田氏に意を決して打ち明けた。「4番は今の僕では厳しいです。監督に橋渡しをしていただけませんでしょうか」。内田氏は山本監督のところへ連れていった。新井は「チームに迷惑をかけたくありません。4番から外して下さい」と直訴した。
しかし、山本監督は30歳を超えてから多くのタイトルを獲得した体験談をなどを話し「俺もブレークしたのは27歳から。頑張ってみろ」と激励した。代役も不在。少々のことでは4番起用を変える気はなかった。
内田氏は、4番の役割とは“勝負強く打点を稼ぐこと”と説く。そのため「アライ」打撃内容の改善に取り組んだ。「何でもかんでもセンターから左に打とうとしていた。強振とは引っ張ること、という感じでしたから。気持ちが積極的すぎて、ボール球も振っていた」。
例えば打球の方向。1死三塁なら構えた際、全体像を見ないで右方向へ視野を持っていくと外野フライになりやすいという。選球眼も重要だ。打者有利のカウントに持っていけば、相手バッテリーの配球傾向は狭まる。「5つの球を考えるのが、2つでよくなる。そうなると狙い球を絞れて背中まで叩くようなフルスイングができます」。
新井は化けた。2005年に43本塁打で初のタイトルを手にした。しかし、内田氏が喜んだのは本塁打よりも94打点と初の打率3割超え(.305)の方だった。「彼が変わった証です。引っ張ってばかりでは3割は打てません。3割を打てば打点も増えます」。