松井秀喜がヤンキース入団を目指した日 長嶋茂雄監督に伝えた“覚悟”

ヤンキース入団会見で笑顔を見せる松井秀喜氏【写真:Getty Images】
ヤンキース入団会見で笑顔を見せる松井秀喜氏【写真:Getty Images】

周囲を気遣う“リスペクト”の精神…松井秀喜の取材秘話

 今年もワールドシリーズの季節がやってくる。巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏がメジャー挑戦の経緯とワールドシリーズMVP獲得の瞬間の思いを口にした。10月中旬、ニューヨークから一時帰国し、母校の石川・星稜高の記念講話に出席。メジャー移籍を意識した時のことや世界一に輝いた時の心境などを振り返った。約90分間のイベントの中では、松井秀喜という男がファンに愛される理由が随所に見られ、13年前のニューヨークでの様々な出来事が蘇ってきた。

 あれからもう13年が経つ。肌寒くなる10月末から11月になると毎年、ヤンキースでMVPに輝いた2009年ワールドシリーズを最近のことのように思い出す。ナ・リーグ王者のフィリーズとの頂上決戦は本当に様々なドラマがあった。何と言っても優勝を決めたシリーズ第6戦。ペドロ・マルチネス投手から本塁打や二塁打などで6打点。ヤンキースタジアムの中心に55番がいた。スタジアムで取材をしていた私の手のひらには汗が滲んでいた。

「MVPはマツイ」――。試合が終わると同時に広報からアナウンスされた。シリーズ通算で打率.615、3本塁打、8打点の活躍を見せたから当然だ。記者たちはグラウンドに降りて取材することを許された。スタンドは興奮に包まれたまま。「MVP! MVP!」とコールされている。視線を高く向けると、大きなお立ち台の上で松井氏がトロフィーを持ってインタビューに答えていた。

 インタビュアーはヤンキースとの契約が最終年となる松井氏に「今年で契約が最後。もう一度、優勝を守るために(ヤンキースで)戦う気持ちはありますか?」と質問した。松井氏は表情を変えずに「そうなればいいですね。僕はニューヨークが好きだし、ヤンキースが好きだし、チームメートが好きだし、ここのファンが好き」と答え、ヒーローインタビューを締めくくった。感動的なシーンだった。

 この時のインタビューの言葉は強烈にニューヨーカーの心を突き刺した。壇上の松井氏に注がれた喝采は次第に大きくなっていった。松井氏は13年後の今、帰国したイベントの中で「夢なのか現実なのかという気持ちでした。大きなスタジアムのど真ん中の舞台の上で、自分が立っているのですから」とまるで夢心地だったということを振り返った。

マンハッタンで取材…松井氏への感謝の言葉が口をついたワケ

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