71年ぶり快挙、ハム加藤は何が凄い? 先発なのに…データが表す“異質な特性”
“七色の変化球”で打者を翻弄…90キロ台スローカーブも武器
またボールゾーンの中では真ん中低めの3コースが多い。このコースは投手からすれば変化球で空振りを取る際に狙う場所であり、加藤もフォークやカーブを投じるケースが多かった。これらの3コースに行く球が多いという事実は、いわゆる「投げ間違え」が少ないことを示すものでもあるだろう。
続いて結果球における球種の割合を確認していく。ストレートは130キロ台後半~140キロ台前半と決して速くはない。だが、130キロ台後半という速球とほぼ同じ速度で変化するシュートと、それと大差ない130キロ台前半のスピードで縦に落ちる決め球のフォークが、相乗効果によって速球の攻略を難しくしている。
また、130キロ前後のカットボールと、120キロ前後の緩いスライダーという、同じ方向に曲がる2つの球種にも約10キロの球速差が存在する。それに加えて、110キロ台のチェンジアップと、時には100キロを下回るスローカーブといったブレーキの利いた球も持つ。7つの球種を巧みに操り、自由自在に緩急をつけることで打者の的を絞りづらくしている。これらの球種の中でも、ストレート、フォーク、カットボールの3球種は結果球となる割合も比較的多く、球速帯も近い。この3球種の使い分けが、加藤の投球の軸となっていた。
最後に球種別被打率を紹介する。結果球になる割合の多かったストレート、フォーク、カットボールのうち、フォークとカットボールはいずれも被打率1割台に抑え込んでいた。この2球種がいかに効果的だったかを端的に示す数字であり、比較的多投する傾向にあった理由もうかがえよう。チェンジアップの被打率は.100と抜群の水準にあり、カーブもシーズン平均の被打率に近い数字を記録。この2球種は投じられる割合が比較的低く、球速帯の遅さも重なって打者にとっては対応が困難だったことがわかる。
奪三振に目を向けると、速球とフォークの2球種がとりわけ多くの数字を記録。抜群の制球で見逃し三振を奪う速球と、鋭く落として空振りを取るフォークの優れたコンビネーションは、打たせて取る投球スタイルの中でも、要所でその効果を発揮していた。鋭く落ちる決め球のフォーク、被打率の低いカットボールとチェンジアップ、90キロ台のスローカーブといった独自の武器も備えており、文字通りの“七色の変化球”によって的を絞らせない投球術も大きな強みだ。
加藤が唯一無二の投球スタイルを備えていることは、圧倒的な与四球の少なさにも示されている。新球場で公式戦最初のマウンドを踏む投手となる来季も、持ち前の投球術で新たな金字塔を打ち立ててくれるかに注目したい。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)