日本虜にした「愛子スマイル」 モーグル上村が語った“最後の自己満足”に五十嵐共感
野球とモーグルに見る共通項、日本人は器用だが…
上村:モーグルは世界的にも競技人口は多くないので、W杯も五輪も大体同じ30人ほどのメンバーで戦っているんです。五輪に出場できるのが30人。W杯はもっと出場枠があるけど、出場できるレベルにある選手が多くなくて、結局同じ30人で戦っている感じでした。
五十嵐:その中で頭抜けた選手が出てくると、その選手に勝つためには……という競い合いになるわけですか。
上村:はい。私の世界ランキングは割と上下しましたが、自分で言うのは恥ずかしいんですけど、技術面では世界トップ5にいたと思っています。だからこそ、辞められなかったのもありますね。次は自分が優勝する番かと思っても、強い選手が出てきたり、怪我明けの選手が強くなっていたり。自分が勝てるように準備はしても、最後まで分からないものですね。
五十嵐:トップに立つイメージはあったんですよね。
上村:ありました。それがなかったら長くやっていけなかったと思います。
五十嵐:本当に紙一重の勝負なんですね。
上村:採点競技なので、ジャッジに与える印象も大きな要素。日本人は器用なのでスキー操作は抜群で、私も誰にもできない滑り方だと自負していたんですけど、ジャッジが求めるのは見せ方や体の使い方など「プラスα」の部分。私はそこが少し弱くて……。
五十嵐:すごく日本人ぽい(笑)。日本人の野球選手も似てますよ。でも、世界で戦う時こそ、自分の良さや日本人の魅力は出していくべきかなと。変に合わせると自分らしさがなくなってしまうから。
上村:武器になりますよね。でも、海外で戦わなければ、技術だけではないと気付かなかったかも。自分と海外選手の滑りを見比べた時、重さが生む迫力や印象の違いに気付いて、1年で体重を5キロ増やしたこともあります。パワーもあって、細かい技術を持つ選手になれば1位になれるんじゃないかって。
五十嵐:どうでしたか?
上村:いい練習が繰り返しできるようになったし、結果も良かったです。体力が上がって、精神的にも安定しましたね。
五十嵐:技術プラス、パワーか。世界で戦うとなると、やっぱりそうなるのか。野球も同じですね。僕もメジャーでパワーの必要性を感じました。もちろんイチローさんのように技術で生きられる選手もいるけど、自分の良さを残しつつ、足りないものをどう補うか。
上村:採点競技はジャッジの評価を見れば、どこで減点されているのか分かります。私はカービングターンという難しい滑り方をしていたので、その技術を追求するが故に、時々大きなミスをしてしまう。その減点が大きくて、安定して高得点を獲りづらい。挑戦するからこそのミスなんですけど。
五十嵐:その分、成功したら高得点なんですよね?
上村:それが高くならないんです……。
五十嵐:ダメじゃないですか。ただの自己満足ですよ(笑)。