アマ球界からメジャー指導者に…高まる“門戸開放”の波 「深い懐」の根底にあるもの【マイ・メジャー・ノート】第11回
米国は、過ちや修正の可能性が常に残される許容社会
一民間人のアイデアでも理に適っていれば大国の軍を教導できるという事実が「懐の深み」を照らす。そこには、専門家が「可謬(かびゅう)社会」と定義する、柔軟性に富んだ考え方「プラグマティズム」の観念が根付くアメリカ社会が映る。別言すれば、過ちや修正の可能性が常に残される許容社会である。当地で暮らす実感から、先入感や既存の価値観を解きほぐす感性を涵養する土壌が確かにある。
一方で日本の社会は、同調圧力を常に感じ、新たな空気の入れ替えには及び腰になる「無可謬社会」と表され、感情を抜きにした戦略的な行動が取りにくいとされる。
思索の果てに、僕はこんなことを思った――。
大阪桐蔭高校の西谷浩一監督がかつての教え子たちとプロ野球で同じユニホームに袖を通し、鋭い眼光で戦況を見つめる姿を見てみたい……と。
○著者プロフィール
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。シアトル在住。【マイ・メジャー・ノート】はファクトを曇りなく自由闊達につづる。観察と考察の断片が織りなす、木崎英夫の大リーグコラム。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)