「リリーフの方がよほど難しい」 WBCでは超・分業制? 吉井投手コーチが貫く信念

日本代表の投手コーチを務める吉井理人氏【写真:荒川祐史】
日本代表の投手コーチを務める吉井理人氏【写真:荒川祐史】

記者への“一喝”も信念から「中継ぎ降格なんてないんやで」

 6年ぶりに行われるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、日本代表の投手コーチを務めるのが吉井理人氏だ。今季からロッテの監督にも就任し、まるで“二刀流”のような立場となる。現役時代は先発も抑えも務め、さらにはメジャー通算32勝。コーチとなってからは数々の投手の開花を助けてきた経験を、トップレベルの選手だけが集まる侍ジャパンでどう生かすのだろうか。これまでの主張から見えてくるのは、各選手の“専門性”を見極めての起用だ。

 吉井氏が日本ハムの投手コーチ時代、とがめられたことがある。先発投手が打ち込まれた試合後のことだ。次の登板の話題になり、報道陣から「中継ぎに“降格”ということですか?」と声が上がると、「ちょっと待った。降格なんてことはないで。リリーフの方がよほど難しいんやから」とピシャリ。強い信念を垣間見せた。

「ほんまワシ、どうしようもない選手やったからな」と自身で口にする吉井氏は、近鉄でまずリリーフとして1軍切符をつかみ、後に先発へ転向した。そのことで選手寿命は延びたという。メジャーで3球団目となったエクスポズ(現ナショナルズ)では、中継ぎへの配置転換に納得がいかず「もう打席に立たないんだからいらんやろ」とばかりに、首脳陣の前でヘルメットを叩き割ったことまであるという。

 ただ指導者となった現在、良いリリーフ投手の方が得難い存在だと確信している。「先発は準備すれば誰でもできる。でもリリーフはそうはいかない。できる投手とできない投手がいる“専門職”なんや」とよく言われた。だからコーチとしては投手運用に心を砕いた。しっかり使いどころを説明し、リリーフ投手が自身で出番をイメージしながら準備できるようにした。時にその枠を超えて“無理使い”しようとする指揮官とは、対立も生まれた。

リリーフ投手が自身で出番を見通せる環境づくりが“得意技”

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