狂った野球人生「調子に乗っていた」 掛布雅之を追いかけ“天狗”に…招いた大失速

南海の中百舌鳥寮の前で写真に納まる藤田学氏【写真:本人提供】
南海の中百舌鳥寮の前で写真に納まる藤田学氏【写真:本人提供】

4年目、5年目には2年連続16勝…これも“掛布効果”

 もっとも掛布氏はその年、打率.325、27本塁打、83打点のもはや阪神のスター選手。まだまだ近づいた気にもならなかったという。「阪神と南海では新聞の扱いとかも全然違うじゃないですか。やっぱりすごいですからね。阪神タイガースは……」。さらに発奮材料となり、藤田氏は続く4年目に16勝13敗、防御率3.28、5年目には16勝11敗、防御率2.87の成績を残した。“ミスタータイガース・掛布効果”もあって、順調に成長曲線を描いていったわけだ。

 これで自信もついた。というよりも、この結果に今度は天狗にさえなってしまった。「3年目は後期だけで10勝しましたし、4年目、5年目の16勝は1年間投げたら、こうなっただけと思った。実際、あの頃は普通に1年間やれば、15以上は勝てるって思ってましたからね」。

 そこから、流れが悪くなった。ライバルの掛布氏が48本塁打を放って本塁打王のタイトルを獲得した6年目の1979年、藤田氏はわずか8試合の登板で2勝5敗に終わった。「ちょっと調子に乗っていたのを、神様が見ていたんじゃないですかね」と振り返ったシーズン。開幕戦での怪我が野球人生を狂わせたが、同時にセ・リーグの、ある大物投手の忠告を“無視”したのも後に響いた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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