日本なら好契約も…競争を選択 筒香嘉智、米挑戦の中で見つけた“失敗”より怖いもの

心身のエネルギーを満たして臨む今季、“相棒”とのタッグ復活も追い風に

 パイレーツに所属した昨季、ピッツバーグでの本拠地開幕戦で腰を痛めた。故障を抱えたまま、だましだましプレーをして成績を残せるほどメジャーは甘くない。「怪我をする時は偶然ではなく必然。心の影響も大きかったのかなと思います」と責任を感じて試合に出続けたが、打率は2割に届かず。ようやく負傷者リスト入りしたのは5月下旬。7月に戦列復帰を果たしたものの、8月に40人枠を外れてブルージェイズへ移籍し、傘下3Aでシーズンを終えた。

「僕のエネルギーが弱かったのが一番の原因だと思うんですけど、良くも悪くも自分を殺した1年だったと思います。ワガママではないですけど、もっと自分を出せばよかったかなとすごく思いました。色々と重なったのが去年でした」

 日本に帰国すると、中学生の頃からアドバイスを請う治療家の元で、体のケアとトレーニングに努めた。ウエートトレーニングは一切せず、自重を使った“エクササイズ”と呼ぶ運動も合わせて体を調整した。人間の体が本来持つ力を発揮するため、体の中で骨や筋肉が正しく、かつ効率良く動くよう整えるイメージ。地元・和歌山に作った室内練習場での打撃練習も合わせ、オフの調整は順調に進んだようだ。

「今は腰に全く痛みがない状態。僕の中では非常にいい感覚で、自信を持って打席でスイングできる状態ではあります」

 健康な体を取り戻し、スイング時には軸がブレずに体の各パーツが滑らかに連動するようになった。「だいぶまとまってきた。やっと体に一つの芯が通って、体の中が丸くなってきた感じがします」と独特の感覚を表現。心身のエネルギーも高まり、「これまでとすごく変わっている。やっと地に足をつけてできるかなという感覚です」と話す表情は明るい。

 今季は追い風も吹く。メジャーの規定が変わり、長年日本で愛用した形のバットが使えるようになった。2020年のレイズ入団以来、「色々なメーカーさんにワガママを言って、色々なバットを作っていただいた」と、3シーズンで試したバットは100種類を超える。「どうしても感覚が合わなかった。本当はどんなバットでも操れるのがプロとしては最高だけど、なかなか僕は対応できなくて」。バットは「体の一部」とこだわりを持つだけに、“相棒”とのタッグ復活は心強い。

諦めずに続ける挑戦「どんどん失敗した方がいい」

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