村上宗隆の“金縛り”解いた大谷翔平 専門家が決勝も期待「必ずチャンスで回る」
大谷の変化も指摘「こころが沸き立つところがあるのかも」
「打者には頭で甘い球を振っていこうと思っていても、金縛りにあったように手が出ない時があります。特に今大会の村上は、前を打つ2番の近藤と3番の大谷が打ちまくり、点を取れるか取れないかは自分しだいという場面で打席に入っていた。その重圧は計り知れません」と思いやる。村上は1次ラウンドの4試合は全て4番を任され、14打数2安打(打率.143)7三振。準々決勝からは吉田に4番の座を譲り「ほんの少しは、気が楽になっていたかもしれませんね」。
いずれにせよ、昨季、日本人選手の歴代最多記録を塗り替えるシーズン56本塁打を放ち、史上最年少の3冠王にも輝いた村上が、大谷の登場で“上には上がいる”ことを思い知らされ、国際試合で不振というつらさを味わった。「さすがと思わせる部分もありますし、村上の野球人生としては、最高のタイミングで試練を味わうことができたと言えるのではないでしょうか」と野口氏はポジティブにとらえている。
ところで、この試合の勝敗の分かれ目は、どこにあったのだろうか。野口氏は「本当に試合の流れが目まぐるしく変わりました」と振り返る。実際、吉田の同点3ランで侍ジャパンに初めて流れが来たかに見えた直後の8回には、5回からそれまで3イニングを無安打2四球無失点に抑えていた山本由伸投手(オリックス)がつかまり、2点を勝ち越されていた。
あえて勝負を分けたワンシーンを選ぶとすると、「1点ビハインドの9回、先頭の大谷が二塁打で出塁したことでしょう」と野口氏は指摘する。大谷はメキシコの守護神ジオバニー・ガイエゴス(カージナルス)の初球のチェンジアップを果敢に打って出て、右中間を破る二塁打とした。塁上では味方のベンチに向かって、派手に雰囲気をあおるジェスチャーを見せた。昨季、メジャーリーグ中継の解説を数多く務めた野口氏も「あんな大谷の姿は見たことがありません。大いにナインを鼓舞したはずです」と評する。「エンゼルスでは早々とプレーオフ争いから脱落するシーズンが続いていますから、大谷自身も近年にないほど心が沸き立つところがあるのかもしれません」と見ている。
それにしても「不思議なことに野球では、打順を変えても必ずチャンスで回ってくる打者がいるものです。今大会ではまさに村上がそれ。結局、彼が打つか打たないいかにかかっているのかもしれません」と野口氏は感嘆する。米国との決勝でも日本はもう1度、村神様に託すことになるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)