悲劇からの変身に中畑清が文句「抜いたなぁ!」 たった88球の完封呼んだ“粘着質”の助言

打ってもらう球を使うことで「投球が面白くなった」

 相手打者のタイミングをずらすストレートの緩急。決して簡単なチャレンジではなかったが、鈴木氏はクリアし、自分のものにした。「打ってもらうボールを使うことで、ピッチングが面白くなった。抑えの時は抑え込むってだけで、ピッチングとしての妙はない。全力ほど簡単なものはないからね。成東高(監督)の松戸(健)先生に言われたもん。ピッチングで語れるようになったなってね」。

 プロ初完封の巨人戦。「印象に残っているのは、チャンスの中畑(清内野手)だね。飛びついてくるもんね。140キロのタイミングでいったら130キロ。そしたらひっかかっちゃうんですよ。チャンスならなおさら食いついてくる。中畑がショートゴロを打って『抜いたなぁ!』って文句を言いながら走って行った時が何回かあったよ。中畑清だけね」。見事な88球完封は鈴木氏の再出発ののろしみたいなものだった。

 鈴木氏はニュースタイルに、そして先発への道に導いてくれた近藤貞雄監督と権藤コーチに感謝している。「2人は俺の若い時からの師匠でもあるしね。ものにしたのは俺かもしれないけど、その方向に持っていってくれた時の首脳陣に2人がいたのも運が良かったと思っている」。この年、中日はリーグ優勝を成し遂げた。思い出深いプロ10年目だった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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