井口資仁氏が提案する「現役ドラフト」の改善 移籍活性化に願う“チャンス”の増加
制度を形骸化させないための細かなルール設定を提案
大竹、細川が活躍するセ・リーグは、その他にも広島の戸根(千明・前巨人)が救援として1軍に定着し、結果を残しています。5月上旬に1軍登録から外れたものの、巨人に移籍したオコエ(瑠偉・前楽天)も環境が変わって成功した例でしょう。オープン戦からしっかりアピールしていましたし、23試合で打率.247、2本塁打6打点とまずまずの成績を残している。これまで以上に多くの視線を感じ、危機感を持ちながらオフとキャンプを過ごせたのが良かったのかもしれません。巨人のチーム事情もあるでしょうが、シーズンを通じて1軍で見たかったですね。
ヤクルトの成田(翔・前ロッテ)、DeNAの笠原(祥太郎・前中日)も現在はファームにいますが、開幕後に1軍マウンドに上がりました。
一方、パ・リーグは最近、西武の陽川(尚将)が1軍に昇格して初打席でホームランを打っていましたが、1軍での出場機会が最も多いのがロッテの大下(誠一郎・前オリックス)で10試合、ソフトバンクの古川(侑利・前日本ハム)は5登板。楽天の正隨(優弥)は1軍出場したものの現在はファームで、オリックスの渡邉(大樹・前ヤクルト)と日本ハムの松岡(洸希)はここまで1軍出場はありません。
リーグの違いというよりも、即戦力を求めたのか、少し先を見据えた戦力を求めたのか、球団の考え方の違いの表れと言えそうです。即戦力として獲得した選手はしっかり活躍していますよね。ただ、現役ドラフトの意義を考えた時、未来を見据えた戦力補強の機会としていいものか。チャンスが回ってこなかった選手に対する救済と考えるなら、メジャーで実施されている「ルール5ドラフト」の要素を少し採り入れるべきかもしれません。
現役ドラフトがヒントを得た「ルール5ドラフト」には、ドラフト指名できるのはプロ在籍4〜5年以上の選手に限られたり、球団は指名した選手を翌シーズンの全期間にわたりメジャーで起用しなければならなかったり、細かな規定があります。日本でも今後は、ドラフトされてから何年以上経った選手を対象とするとか、育成契約で2年以上経った選手は自動的にドラフト対象になるとか、獲得した選手は翌シーズン最低○○試合起用しなければならないとか、ルールを精査していく必要があるでしょう。
また、ドラフト対象となる選手をチームが提出するのではなく、保留選手以外から他球団が欲しい選手をピックアップできる制度にできればいいですね。第1回の方法だと、チームが提出したドラフト対象選手は、裏を返せば戦力外であると言っているようなもの。ドラフトされた選手の中には複雑な心境だった人もいるでしょう。実際には、なかなか1軍昇格のチャンスがなく他のチームに行きたいと思っている選手は、どの球団にもいます。そういった選手の意向も汲めるような形ができるといいのではないかと思います。