15歳で失った利き手の指…障害者野球が「輝いて見えた」 日の丸を背負い宿る“使命”

子どもの頃から慣れ親しんだ遊撃でノックを受ける土屋さん【写真:編集部】
子どもの頃から慣れ親しんだ遊撃でノックを受ける土屋さん【写真:編集部】

日本代表入りで見つけた新たな目標「一歩踏み出せるコミュニティを」

 社会人3年目の24歳。普段はフルタイムで働きながら、週1回の練習に参加する土屋さんは最近、少しずつ考え方が変わってきたという。「今までは自分のことを一生懸命やってきましたけど、今度は自分が発信して、次につないでいく。そっちの方が重要だなって気付きました」と切り出すと、真摯に言葉を紡いだ。

「すごく難しいことですけど、世の中には障害を持っていて引き込もってしまう人もまだまだいるようなので、そういう人たちが一歩踏み出せるコミュニティを作っておいた方がいいと思うんです。僕はこの野球に少なからず救われた部分がある。だから、身体障害者野球があることを発信して知らせていきたいですし、この環境を保っていきたい。いてほしくはないですけど、僕みたいにある日突然怪我をして、将来に対して漠然とした不安を持つ人が1人でも、こういう世界もあると知って前向きに乗り越えられたらいいなと。せっかく日本代表に選ばれたので、そういう責任もあるなと感じています」

 2連覇を目指して戦う9月の世界大会は「怪我をしてから今日まで、本当に色々な人に助けてもらったので『ありがとうございます。おかげでここまで来られました』という感謝の気持ちを表現しながら、自分としても『ここまで来たんだ』という想いを噛みしめられるような大会にしたいです」と晴れやかに微笑む。

「日本代表になったら一区切り、そこで終わりかと思っていたんですけど、なったらなったで次につなげたいという想いが出てきた。個人的には一区切りでも、それだけじゃないのかなって。終わったら、また次が始まる、というか。最近、ドリームスターに車いすの高校生が入ってきたんですけど、毎週日曜日の練習が楽しみって言ってくれるんです。一生懸命に野球をする彼の姿を見て、その子のお母さんも嬉しそうで、そういうのがなんか素敵だなって。だから、若い子にもどんどん入ってもらって、(野球の時間が)希望みたいな感じになればいいなって思います」

 感謝と希望を胸に臨む世界大会。バンテリンドームでは自分にしかできない唯一無二のプレーを披露し、次世代へのバトンをつないでいく。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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