長打不足の中日に“希望の星”、阪神には異次元の先発投手 セイバー目線の5月MVP

投手部門も上位は阪神、大竹耕太郎が残した驚異的な記録

 続いて、投手部門を見ていく。投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標「RSAA」を用いる。

○大竹耕太郎
RSAA:6.91、登板4、イニング27、防御率0.33、WHIP0.85、奪三振率5.67、奪空振率8.1%、QS100%、HQS率75%

○伊藤将司
RSAA:5.16、登板4、イニング26回2/3、防御率2.36、WHIP1.09、奪三振率5.40、奪空振率9.2%、QS100%、HQS率25%

○村上頌樹
RSAA:4.62、登板4、イニング26、防御率2.77、WHIP0.88、奪三振率10.73、奪空振率8.0%、QS75%、HQS率50%

○森下暢仁
RSAA:4.59、登板4、イニング27回2/3、防御率1.63、WHIP0.94、奪三振率7.48、奪空振率12.5%、QS100%、HQS率50%

○グリフィン
RSAA:4.55、登板4、イニング26回1/3、防御率2.03、WHIP0.98、奪三振率9.45、奪空振率11.7%、QS100%、HQS率50%

○岩崎優
RSAA:4.38、登板10、イニング9回1/3、防御率0.00、WHIP0.43、奪三振率14.46、奪空振率14.5%、9セーブ

○藤嶋健人
RSAA:3.19、登板13、イニング11回1/3、防御率0.79、WHIP0.53、奪三振率9.53、奪空振率11.3%、2ホールド

 快進撃を象徴するかのように、RSAA上位8人のうち4人が阪神の投手だ。チームの月間成績を見ても失点率2.88、先発防御率2.95、救援防御率1.99はいずれもリーグ1位で、QS率83.3%は群を抜いてトップである。その中で最も貢献度が高かった投手といえば、大竹になるだろう。

 大竹も細川と同様、現役ドラフトで移籍した選手だ。ソフトバンクでは2019年に17試合登板で5勝を記録したが、その後1軍での登板数が激減。先発ローテーションでの登板機会を与えられた今季は4月、5月とコンスタントに3勝ずつを記録し、すでにキャリアハイの6勝をマーク。5月は月間防御率0.33、WHIP0.88と先発投手として驚異的な記録を残した。ゴロよりもフライの打球が多いタイプの投手だが、内野フライの率が高く、広い甲子園球場をうまく味方につけているようだ。以上より5月の月間MVPに大竹を推薦する。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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