侍右腕が過ごした“苦悩の春” ダルビッシュから独り立ちの決意「頼りすぎてもダメ」

侍Jでも一緒だった厚澤投手コーチは「良い方向に乗ってくれたら」
なぜ、1日限定の1軍練習に“招集”されたのか。侍ジャパンでも投手コーチを務めたオリックスの厚澤和幸コーチは「今の宇田川の100%を見たかった。それも、京セラドームのブルペンで見たかったんです」と説明する。
「ファームで打たれていたボールがどれぐらいの精度なのか。それを僕ら(首脳陣)が確認したかった。それプラス、仲の良い(山崎)颯一郎たちに会ってもらいたかった。リフレッシュも兼ねてね。思いのほか、彼にとって良い1日になったみたいですね」
良い意味での疑問も残ったという。厚澤投手コーチは「(ブルペンで)ボールをチェックしたら『なんで打たれてるの?』というぐらいのボールだった。彼はアドレナリンを全開に出しながら投げるタイプなのでね」と緊迫したマウンドが似合うとも表現した。最後には笑顔で「ただ、彼の悪いところは調子に乗るところがあるので(笑)。良い方向に乗ってくれたらなと思います」と愛情を込めて、釘を刺すことも忘れなかった。
宇田川は、2020年の育成ドラフト3位でオリックスに入団。2022年7月に支配下選手登録を勝ち取ると、威力ある直球や落差のあるフォークを駆使して、打者を翻弄。昨季は19試合に登板して2勝1敗、防御率0.81の成績を残した。日本シリーズでも4度のマウンドに上がり、26年ぶり悲願の日本一に貢献。歓喜の美酒を浴びた。
「必要戦力」であることは間違いない。マウンドに堂々と君臨する剛腕に、悲鳴は似合わない。苦しみを拭い去り、再びマウンドで絶叫してみせる。
(真柴健 / Ken Mashiba)
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