「威厳をかざすから、なめられる」 高校野球に飛び込んだ元オリ監督…貫く“対等目線”
森脇浩司氏「指導者は示して導くもの」
「生徒に何ができるか、ということではなくて、向きあう生徒と何ができるかです」。福岡・沖学園のシニアディレクターを務める元オリックス監督で野球評論家の森脇浩司氏はこのことを大事に思って、生徒たちに接している。「当たり前ですけど、指導者は支配者ではない。指導者は示して導くものだと思っていますから」。この考えは今に始まったことではなく、これまでのプロ野球指導者としても肝に銘じてきたことだという。
森脇氏は繰り返して強調した。「沖学園でお世話になるに当たって思ったのは、まず先生方をリスペクトすること。そして、生徒に何ができるかではなく、生徒と何ができるかです」。その上で「大事なのは監視ではなく、観察だと思う。これはプロ野球の選手に対してもそうでしたが、高校生の場合、この3年間の中で、最終的にその人が自立するということを目指していく中で、まず自発性を求めることが大事。そういう意味で指導者も上下関係の中で接するというよりも目線をちょっと落とす。対等に接することだと思っています」と声を大にした。
さらには「よく『なめられたらいかん』とか言うけど、普通に接していたら、本来なめられるわけでも何でもない。変に威厳をかざすから、逆になめられるのだと思う。対等に接すること、その器量を持つことが大事だと思います」。それを踏まえての「監視」ではなく「観察」。森脇氏は「そういうことを常に自分に言い聞かせながら、日々、過ごしています」と話した。
沖学園のグラウンドは狭い。「福岡市内にありますからね。ライト側は40メートル、レフト側は70メートル。球場とは言えませんよね。そんな長方形のグラウンドに90人くらいの部員がいる。やっぱり、うまくなろうと思ったら、ひと工夫、ふた工夫、そういうものが必要になってくる。指導者、先生方だけじゃなく、生徒にも創意工夫がつきまとうけど、そういうものは大学、社会人になっていくにあたっても、絶対必要な要素ですから、私はポジティブに受け止めています」。まさに生徒とともに考えて、前に進んでいるわけだ。