「威厳をかざすから、なめられる」 高校野球に飛び込んだ元オリ監督…貫く“対等目線”

怒鳴る指導は「大人の発散の場になっていないか」

 こんなことも付け加えた。「ウチの学校ではないですし、別にどこの高校とか、どこの中学とかいうわけじゃないんですが、試合を見に行って、バックネット裏とか、ちょっと距離を置いて見ている中で、大人が子どもを怒鳴る場面にでくわしたことがありました。そういう状況とか空気感は決して気持ちのいいものではないのは誰でもそうでしょうけど、そういう捉え方ではなくても、本当にいいものではないなって思うことはありますね」。

 森脇氏は首を傾げた。「野球なんてミスの多いスポーツなので、当然、そういうものは起きるわけで、それは反復練習をしたりとか、ちょっと考え方を変えたりすれば、やがては成功していくわけです。だから別にそういうことに対して怒鳴る必要はないと思うんですよ」。叱ることを全否定しているわけではない。「我々の仕事は伝えるというもの。叱ることも大事と思います。でも、大きく怒鳴るという方法で果たして、それで伝わるのか。なんか大人の発散の場になっていないかと思う時があるんですよ」。

 厳しい指導が当たり前のようにあった時代も森脇氏は当然知っているが「そもそも、あの頃とは基盤が違うと思います」ともいう。「暴力はいつの時代もよくないですが、僕らの時代の人たちって1回叱られても、また、180度違う褒められるようなことがあるだけで、プラスマイナスゼロに戻れたりとかがあったと思う。今は先にひどく叱られると、もう取り戻せないというような傾向にあるのかなって思いますね」。

 昔を単純に美化することは決してない。そんな時代を経て進化した今があるとの認識。そして、さらにいい時代にしていかなければならないとの思い。「選手と何ができるか」「生徒と何ができるか」は、いろんなことを経験してきた上での指導者としての森脇氏の基本中の基本である。これは絶対にぶれることはない。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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