中学球児からの人気急上昇 強豪チームからも続々…健大高崎に有力選手が集まるワケ

健大高崎・青柳博文監督【写真:片倉尚文】
健大高崎・青柳博文監督【写真:片倉尚文】

健大高崎・青柳監督は選手の進路決定に力を注ぐ

 熱戦が繰り広げられている第105全国高校野球選手権の地方大会。今年の春季群馬大会と関東大会を制した健大高崎は、15日に大会初戦を迎える。昨秋の関東大会でも4強入りし、今年の選抜大会に出場。2002年創部の“新興チーム”は進境著しく、中学球児からの人気も高まり、近年は有力選手が続々入学している。人気の秘密はどこにあるのだろうか。

 創部から指揮を執る青柳博文監督が実感を込めて語る。「今まで来てくれなかった中学チームの主力選手が入学するようになってきた。力のある子が入ってくれるようになりました」

 今年の春季大会。健大高崎は1年生投手2人が躍動し、優勝に貢献した。左腕の佐藤龍月(りゅうが)投手と右腕の石垣元気投手だ。佐藤は中学硬式の強豪「東京城南ボーイズ」で活躍し、U-15侍ジャパンにも選出。進路が注目される中、兄・志龍内野手(3年)のいる健大高崎の門を叩いた。他にも「世田谷西シニア」や「武蔵府中シニア」など、東京の強豪シニアからの入学者が増えた。数年前には見られなかった流れだ。

 充実した施設やスタッフは中学球児には大きな魅力だろう。グラウンドが2面、室内練習場や専用ブルペン、トレーニングルーム、初動負荷トレーニングセンター、野球部専用の寮が2棟。スタッフは青柳監督を筆頭に、高校野球では異例の12人体制を敷いている。さらに、卒業後の進路に力を入れているのも特色の一つだ。

 選手の進路を一手に引き受けているのが青柳監督。選手が2年秋を迎えたところで面談して方向性を決め、一人一人の目標成就へ力を注ぐ。名門の東京六大学にも早大、明大、法大、立大に選手を送っている。今年の3年部員36人中、既に半数が大学から入学内定を得ている。

「進路が悪ければ、選手は来ない」

 控え部員でも進学後に野球をやめる選手はほとんどいないという。根底にあるのは長く野球を続けてほしいという思いだ。そのために少し余裕を持った形で卒業させることを心掛けるといい「高校でやりきりすぎてもダメです」と語る。

 7年間のサラリーマン生活が生きる。「選手の入学と進路は一体。進路実績が良くなければ選手は来ないです。会社ではいい材料を仕入れて、いいものをみんなで考えて作り上げて高く売る。選手も一緒だと思うんです。質の高い選手を仕入れて上達させて、大学やプロ、社会人に送り出す。うまく回れば、組織として良くなるのではないかと思います」と力を込める。

 青柳監督とともに中学生のスカウティングを担当するのが赤堀佳敬コーチだ。「(中学野球関係者と)信頼関係を築いて、シニアから有力選手を連れて来てくれるようになりました」と指揮官も信頼を寄せる30歳のコーチが重視するのは、技量はもちろんだが、気持ちだという。

「設備や条件でいえば、ウチよりいい学校はあると思いますし、そこで選んでもらっても強いチームはできないと思います。学校(健大高崎)で初の日本一、初のドラフト1位選手になるといった野心や野望を持っている子が集まってほしいし、集まっていると信じています」

 指導者の熱意と選手に寄り添った進路選び。こうしたことが、中学球児や保護者の信頼を得る秘訣になっている。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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