「野球を辞めるまで、頭の片隅に」 前回登板で1/3回6失点KO、巨人菅野が得た教訓
7回に内野ゴロの間に“命取り”の失点「悔いは残ります」
■ヤクルト 1ー0 巨人(1日・東京ドーム)
「またひとつ、教えられたような気がします」。33歳でプロ11年目のシーズンを迎えている巨人のエース、菅野智之投手はしみじみとそう述懐した。1日に本拠地・東京ドームで行われたヤクルト戦に先発し、8回1失点に抑えるも、打線の援護がなくチームは0-1の零封負け。菅野自身、今季4敗目(2勝)を喫したことを受けての言葉だった。
特別な思いを秘めてマウンドに上がっていた。と言うのは、ヤクルトには7月17日に神宮球場での前回対戦で、初回1死しか取れず2本塁打を含め6安打で6失点。1/3回の自己最短KOを食らっていたからだ。「前回はほぼファーストストライクをやられていたので、今までにない配球をしなければいけないと思ってた」と明かす通り、6安打のうち3安打が初球を打たれたものだった反省を踏まえ、細心の注意を払った。最速151キロを計測したストレートを軸に、多彩な変化球でコーナーを突き、6回までは相手に三塁も踏ませなかった。
惜しまれるのは、両チーム無得点で迎えた7回。先頭のドミンゴ・サンタナ外野手に左翼線二塁打を浴び、送りバントで1死三塁のピンチを背負う。ここで一発のあるホセ・オスナ内野手に対し、際どいコースを攻めながらも、結局ストライクを取れず4球で歩かせた。「オスナとしっかり勝負できていればな、という悔いは残ります」と唇をかむ。
こうして1死一、三塁となり、左打者で足の速い長岡秀樹内野手に一、二塁間へ転がされ、この二ゴロの間に先制点を許した。この最少失点が“命取り”になったが、「やっぱり長岡君だと、ゴロを打たれたら1点という形だったので、難しい場面ではありました」と諦めるしかなかった。
一方、味方打線はプロ3年目で2年ぶり2試合目の1軍先発となった左腕・山野太一投手に7回まで4安打無得点に抑えられ、結局零封負け。それでも菅野は「長くやっていれば、そういうこともありますし、逆に前回対戦では初回に6点を取られたにも関わらず(味方打線がいったん逆転して)負けを消してもらった。野球は持ちつ持たれつだと思いますし、いちいち一喜一憂している場合ではない」と意に介さない。
「野球を辞めるまで頭の片隅にずっとあると思います」
ただし、今回1失点に抑えたからといって、前回の屈辱が薄れるわけではない。「いつでも前回のようになりえる可能性はある。恐れを持つことは、投手にとって大事なことだと思います。1軍に復帰してからポンポンといい形でずっと抑えていましたが、ああいう風になって、またひとつ教えられたような気がします。野球を辞めるまで、教訓として自分の頭の片隅にずっとあると思います」と語る。
今季は右肘の張りで出遅れたものの、6月11日のソフトバンク戦で1軍に復帰すると、徐々にイニング数を増やし、7月8日のDeNA戦では7回無失点の快投を演じて完調近しを印象づけた。ところが前回のヤクルト戦で思わぬ落とし穴にはまり、改めて考えさせられたことがあったようだ。
賢者は、失敗からより多くのことを学ぶ。「引き続き、投げるごとに良くなってきている。状態はまだ上がると思います」と請け合った菅野は、また1つ意義深い年輪を加えたのかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)