ドラフト上位候補の慶大・廣瀬が変えた「半足」 スカウトも仰天した“対応力”

今季1号2ランを放った慶大・廣瀬隆太【写真:加治屋友輝】
今季1号2ランを放った慶大・廣瀬隆太【写真:加治屋友輝】

「“半足”くらいホームベースに近づいています」

 今秋ドラフト上位候補の慶大・廣瀬隆太内野手(4年)が23日、東京六大学野球秋季リーグの法大1回戦で今季1号2ランを放った。通算ではリーグ歴代5位タイの19本目の本塁打。最近はやや不本意なシーズンが続いていたが、プロの評価も再上昇ムードだ。

「2番・一塁」で出場した廣瀬は、法大の先発で春季リーグでは最優秀防御率(0.68)に輝いた篠木健太郎投手(3年)に対し、初回無死一塁の第1打席で三塁内野安打。いきなり1イニング3得点を挙げる流れをつくった。2回1死二塁での第2打席は、カウント0-2と追い込まれながら、4球目の高めに浮いたカットボールを逃さず、左翼席中段へ放り込んだ。

「真芯に当たったので、しっかりホームランになってくれました。僕は基本的に全球真っすぐ狙いですが、高めに浮いた分、反応できたのだと思います」と手応えありげな廣瀬。ネット裏で見届けた広島の苑田聡彦スカウト統括部長は「本塁打が出たことより、急に打ち方が良くなったことに驚きました。これまでは体が開き気味で、ボールが怖いのかな、と思わされるくらい内角球に対して腰が引けることがありました。しかし、今日は普段よりホームベース寄りに立ち、内角にもしっかり対応していました」と指摘。「こういう打ち方が続くなら、非常に楽しみです」とうなずいた。

 本塁打を量産できる才能は、誰もが認める。ただ、打率は1年秋の.351(リーグ4位)が最高で、2年春にも.318をマークしたが、その他は2割台以下。今春は5本塁打を放ちながらも、打率.192と低迷した。

 廣瀬は「春は打ち急いで、タイミングが合っていませんでした。この夏、ゆったりタイミングを取ることをテーマに練習してきました」と明かす。秋季リーグは23日現在、3試合で打率.364(11打数4安打)の好調なスタート。苑田統括部長が指摘した打席で立つ位置についても、「法政にはいつもインコースを攻められるので、そこに投げにくくさせたいという思いもあって、“半足”くらい(ホームベースに)近づいています」と認めた。

歴代単独4位の阪神岡田監督にはあと1、リーグ最多は高橋由伸氏の23本

 実は開幕前に右手首を痛め、「完治はしていませんが、だいぶよくなっているので問題はないと思います」(廣瀬)という状態で、万全にはほど遠い。本職の二塁手でなく、一塁手としての出場となったのも、堀井哲也監督が「守備で手首の負担を少しでも軽減し、打撃に集中してほしいという意図もありました」と明かす。回復とともに、さらなる猛打が期待できそうだ。

 慶大の大先輩で元巨人の高橋由伸氏が保持する、リーグ最多記録の通算23本塁打まで、あと4本。廣瀬は「自分としては特に意識していなくて、打席で全力を尽くすだけだと思います」と言うが、慶大は今季残り3カードで、法大2回戦を含め、最低でもあと7試合は残されているわけで、更新のチャンスはある。阪神の岡田彰布監督が早大在学中にマークした歴代単独4位の20本には、あと1本と迫った。

 大学からプロ入りする選手の中には、下級生の頃の成績がピークで、下降線を描きながらも指名されるケースと、上げ潮で新天地に向かうケースがある。「プロに入ってから活躍する可能性が高いのは、後者の方です」と苑田統括部長。そういう意味でも、廣瀬にとってラストシーズンは重要な意味を持っている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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