対戦チームは「仲間」 美技に拍手、打たれても納得…相手を敬う思考のメリット

中村聡宏氏を招いて開催した講義の様子【写真:片倉尚文】
中村聡宏氏を招いて開催した講義の様子【写真:片倉尚文】

千葉商大付の藤崎主将「相手がいるから野球ができる」

 今年の千葉県の高校野球でインパクトを残したのが千葉商大付。夏はノーシードから、秋は敗者復活戦から勝ち上がり、いずれも県大会ベスト4に進出した。躍進の要因の一つに吉原拓監督が挙げるのが、選手たちが「スポーツマンシップ」を実践したこと。相手をリスペクトする気持ちが生まれ、気持ちの切り替えが容易になり、前向きに戦えるようになったと選手たちも効果を実感している。

 主将の藤崎伶央投手(2年)はかつて、相手打者にホームランを打たれたり相手チームに好プレーが出たりした時「ガッカリした気持ち」になったという。しかし今は違う。「相手を敵ではなく、一緒に野球をしている選手として見ています。相手にいいプレーが出たら、こっちも拍手して褒め称えます。全然変わったと思うし、その考えはチームに浸透しています」と語る。

 千葉商大付の選手たちはスポーツマンシップ教育を展開する中村聡宏氏(日本スポーツマンシップ協会代表理事)に学び、それを実践している。重要な要素の1つが「尊重」。プレーヤー・審判・ルールを大切に思う気持ちで、対戦するチームは敵ではなく相手であり、スポーツを愉しむための大切な仲間だと教えられ、藤崎を始め選手の思考が変わった。

「相手がいるから野球ができると理解できました。打たれたら、相手が上だったという考えです。そう考えると気持ちを切り替えられます。引きずることなく次の打者に向かえます」
 
 今夏の甲子園で107年ぶり優勝を飾った慶応も同じマインド。対戦校のファインプレーに対して、拍手するシーンが話題になった。「(慶応と)同じことをやっているので、もっと野球に生かしていけば、自分たちもより強くなると思います」と藤崎は力を込める。

 高校野球に浸透しつつある相手を敬う精神。こうした考えが広まっていけば、相手へのヤジなどもなくなっていく。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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