9年間で参加校27倍…高校野球で拡大する「リーグ戦」 独自ルールで育む“成功体験”

千葉商大付・吉原拓監督【写真:片倉尚文】
千葉商大付・吉原拓監督【写真:片倉尚文】

慶応など「リーガ・アグレシーバ」参加校から4校が今夏の甲子園に出場

 2015年に大阪の6つの高校で始まった高校野球のリーグ戦「Liga Agresiva」(リーガ・アグレシーバ)が広がりを見せている。9月時点で31都道府県の163校が参加。今夏の甲子園には、優勝した慶応など4校が出場した。今年から参加する千葉商大付はリーガの根幹である「スポーツマンシップ」を学び、今年の夏季&秋季大会で4強に進出。この秋に本格参加するリーガでの狙いを、吉原拓監督に聞いた。

 リーガは球数や球種の制限、木製または低反発の金属バット使用、ベンチ入り選手の全員出場やリエントリーなど、独自ルールを設けて実施するリーグ戦。スポーツマンシップを学ぶことも大前提になっている。選手が固定されがちなトーナメントとは異なり多くの選手に出場機会を与えられることもあり、参加校は拡大している。しかも今夏の甲子園にリーガ参加校から慶応、おかやま山陽、東京学館新潟、立命館宇治の4校が出場。慶応が107年ぶり優勝を遂げ、おかやま山陽も8強入りした。

 千葉県でも徐々に広がりを見せ、千葉商大付は今年から参加。8月下旬に県船橋、君津商、松戸向陽、白井、四街道と合同でイベントを実施した。交流試合では6校の選手が交じってチームを結成し、“即席チーム”同士で試合を行った。知らない者同士がチームを組むことで、真のコミュニケーション力を高めようという意図があった。

 千葉商大付ナインも学ぶ中村聡宏氏(日本スポーツマンシップ協会代表理事)が提唱する「スポーツマンシップ」にある「尊重」の先にあるのが真のコミュニケーション能力。他者の意見を尊重した上で自身の思考や意見を発信し、理解し合う努力をすれば、言いにくいことでも相手に伝えられる能力が身に付いていくという。

リーガでは「投手はストライク、打者は初球からスイングを」

 リーガの開催時期は、主に秋季大会後から11月末まで。まさにここからが“本番”になる。吉原監督は、技術的には投手はどんどんストライクを投げ、打者は初球から振っていくことを選手に求める。「打者は打てる球を振って、投手はストライクで勝負する。それができてからいろいろ学べばいい。まずは成功体験させたい」と力を込める。

 成功体験を積み重ねれば自信が生まれる。自信があれば、打者なら積極的に振っていける。「初球からどんどん振れる選手を出したい。公式戦で初球から振っていくのは勇気がいることですから」と語る。千葉商大付は夏季大会が7試合で54得点、秋季大会は9試合で96得点。猛打で快進撃を続けたが、根底にあったのは積極的にスイングすることだった。

「リーガの理念でやっていけば、積極的な野球ができるようになると思います。どんな化学反応が起きるか、楽しみですね」。新たな試みは選手に何をもたらし、どんな進化を遂げるだろうか。

(片倉尚文 / Naofumi Katakura)

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