農業と野球の二刀流…なぜ鷹コーチに? 戦力外後に新たな世界、培った“育成論”
2022年に現役を引退…球団業務と並行して「釜元農園」の「代表者」を務めた
ソフトバンクは2日、新任コーチの就任会見をPayPayドームで行った。4軍外野守備走塁コーチとなった釜元豪氏は「またユニホームを着て同じ方向を向いて戦えることに喜びを感じました」と、初の指導者就任に喜びを語る。
2011年のドラフト会議で育成1位指名されて長崎県の西陵高からソフトバンクに入団した。4年目の2015年7月に支配下登録され、2019年には38安打、4本塁打を記録するなど結果を残した。2021年オフに戦力外通告を受けると、楽天と育成契約。2022年は支配下登録されることなく、同年オフに再び戦力外となり、現役を引退した。
2023年からはソフトバンクの野球振興部のスタッフに就任した。同時に、長崎県諫早市の農園「釜元農園」を「代表者」の肩書きで営み、異色の“二刀流”として1年を過ごした。あくまでも「手伝える時に手伝う」という範囲で球団業務と両立させてきた中、どんなことを学んできたのか。
「農業も、野球も、一緒のことって絶対にないんです。野球においても、その1球が同じなんてことは絶対にないじゃないですか。農業も一緒で、その時の気温、湿度、生育状況が同じってことは絶対にない。それは父からずっと伝えられました。この一瞬をどう感じられるか」
2023年は振興部に所属して子どもたちを指導「言葉を選ぶというのは感じました」
143試合のペナントレース。チームの勝敗や選手の状態など、同じ状況は限りなくゼロだと言っていい。釜元コーチは農業との共通点について「その状況に応じて、判断をして、その時の最善策をすること。結果的に、それが後から間違っていてもいい。その時に打てる最善策を打てたのかどうかで、反省も変わってくる」と続けて話す。天候という大きすぎる相手と戦った経験で、学んだのは根気だった。
2023年、振興部として子どもに野球指導することも仕事の1つだった。野球未経験の子どもがいることもあり「初心者の子もいて『知っているだろう』という感覚で話せない。初歩的なことで、ベースのここを踏むという話でも『なんでここを踏むのか』というところまで噛み砕かないと理解ができなかった。言葉を選ぶというのは感じました」と、下げられるところまで目線を下げてきた。
4軍コーチ就任に伴って、基本的に農業からは1度、離れる予定だという。育成での入団や他球団での経験、農業で見た景色など、自分の全てを生かして若鷹と向き合う。「選手にとって、コーチでもあるんですけど、アニキのような存在になれたら。頼ってもらえるような存在になれたらと思います」と意気込みを語った。
(竹村岳 / Gaku Takemura)