判断力“覚醒”、強豪校もプロも導入 できなくてOKの「2度やらない」エクササイズ

ライフキネティックに挑戦するソフトバンク・和田毅【写真:高橋幸司】
ライフキネティックに挑戦するソフトバンク・和田毅【写真:高橋幸司】

鷹・和田が挑戦…判断力・瞬発力、認知症予防につながる「ライフキネティック」

 プロ野球選手にとって、1月はキャンプインに向けて自主トレに励む時期。その中で、来月43歳を迎えるパ・リーグ最年長左腕、ソフトバンクの和田毅投手が自主トレで新たに取り入れるというエクササイズがある。幼児からお年寄りまで効果があり、高校野球の強豪校も導入しているという、そのトレーニングとは……?

 マウンド上だけでなく、さまざまな社会奉仕活動にも力を入れる和田は、金銭的理由で野球を続けるのが困難な子どもたちに野球用具を届けるプロジェクト「DREAM BRIDGE」に賛同しており、昨年12月上旬に横浜市内で、支援者を集めたイベントを開催した。そこで、「みんなで一緒に楽しめるアクティビティを」と参加者と共に初挑戦したのが、自主トレで取り入れようと考えていた「ライフキネティック」だ。

 ライフキネティックとは、頭を使いながら体を動かす、運動と“脳トレ”を組み合わせたドイツ発祥のエクササイズ。脳に刺激を与えて活性化させることで、神経の伝達機能を高める効果があり、野球とは別球技の強豪チームが取り入れ、一躍好成績を収めたことから注目されるようになった。

「脳の神経回路の本数を増やすことで、判断力や瞬発力の向上につながり、認知症予防にも良いそうです」と和田。数年前から興味を持ち、分厚い関連本も自ら購入して読み込んできたという。野球界ではまだ広く知られてはいないが、2021年春夏、2022年夏の甲子園に出場し、近年多くのプロ選手を輩出している京都国際高が導入。阪神2軍コーチの江草仁貴氏も指導資格を持つ。

 この日行ったのは、“後出しジャンケン”でランダムに勝ったり負けたりするもの、4色の輪の上を色ごとにポーズを変えながら“ケンケンパ”をするもの、周囲の指示を聞きながら目隠しをして物を取りに行くものなど、ライフキネティックの中でも初歩的なメニュー。それでも、和田はもちろん、イベントに参加した石川雅規投手(ヤクルト)、館山昌平さん(元ヤクルト)、攝津正さん(元ソフトバンク)ら“歴戦の猛者”たちも「難しい!」と悪戦苦闘。参加者全員が笑顔でアクティビティを楽しんでいた。

“マルチタスク”向き…守備・走塁や打撃での状況判断向上へ

 指導に当たった、ライフキネティック認定トレーナーの永松欣也さんによると、「スポーツの中でも、1つの動きをしながらもう1つの判断をする“マルチタスク”のある競技に向いており、野球でいえば特に守備・走塁や打撃での状況判断が研ぎ澄まされることが期待できます」と言う。

 トレーニングとは普通、反復によって動きを習得していくものだが、ライフキネティックがユニークなのは、基本的に同じメニューを2度行わないこと。1度行うと、脳がその動きを覚えてしまい刺激が入らないためだ。よって、初見のメニューを簡単にこなせてしまうのも、効果の面からいえば決してよいわけでもない。みんなで「できない!」などとワイワイ楽しみながら行うのが、脳内物質の分泌にもつながってよいというわけだ。

 1週間のうちに1時間(分割でもよい)、3か月継続がまずは推奨。研究では5歳から90歳まで幅広い年代に効果が見られるという。小・中学生の場合は「週末しか練習がないチームが多いでしょうから、その場合は野球のメニュー優先の方がいいでしょう」と永松さん。まずはリフレッシュの一環として取り入れてみるのが面白いかもしれない。

(高橋幸司 / Koji Takahashi)

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