メジャーで突き付けられた現実 必要だったのは「中学英語」…言葉の壁を乗り越える術
藪恵壹氏は米挑戦時、英語に苦戦「聞くのは聞けるけど喋るのが慣れない」
阪神で活躍した藪恵壹氏は、2004年オフに海外フリーエージェント(FA)権を行使してメジャーリーグに移籍した。アスレチックスとジャイアンツで計100試合に登板したが、戦力外や無所属時期なども経験。Full-Countのインタビューで明かした、異国の地で痛感した言葉の壁、乗り越えるために必要なこととは――。
阪神時代から、ロッカーの隣はいつも外国人選手だった。ジョージ・アリアスやジェフ・ウィリアムスらと積極的に会話を交わし「野球の英語はそこそこ分かるくらい」だったという。
しかし、実際に渡米して感じたのは「全く違う」という現実だった。「聞くのは聞けるけど、喋るのがなかなか慣れない。特に最初は通訳さんが付いてくれていたので、何かあれば通訳にとなってしまうので、余計に成長しなかったんです」。
2006年にはロッキーズを解雇され、メキシコ挑戦。当然この時は通訳がいない。スペイン語圏ではあるものの「メキシコ人は英語も喋れるので、つたない英語で一生懸命、それで何とか通じるようになっていきましたね。今ならポケトーク(翻訳機)とかがあるけど、当時はありませんから」と追い込まれた状況で成長を遂げていった。そんな中で、役に立ったのものは意外なところにあった。
「向こうでは何も言わないイコールそれでいいんだと思われてしまう」
「一番使えるのは、中学の英語でした。60個くらいフレーズを覚えて、それを駆使すれば結構通じましたね」。大事なのは基礎の基礎、ということか。2008年から所属したジャイアンツでは、通訳なしで英語でしっかりと会話を交わせるようになっていた。
最も使ったフレーズは「I’d like to」だという。「何々をしたいんだ、ばっかり。言いたいことは言わないと、向こう(米国)では何も言わないイコールそれでいいんだと思われてしまう。そうならないように、ある程度言いたいことは言って、そうするとそれに対して反応してくれる」と自己主張の必要性も説いた。
オリックスからポスティングシステムを利用してドジャース入りした山本由伸投手は、自身の英語について「本当に最低の最低のレベルだと思います」と明かしていた。課題を乗り越えるための鍵は、意外と身近にあるのかもしれない。
(町田利衣 / Rie Machida)