二塁→本塁生還の確率高める方法は? 進学校野球部が着目…1点奪う“ベストな角度”

神奈川県立多摩高校野球部ナイン【写真:伊藤賢汰】
神奈川県立多摩高校野球部ナイン【写真:伊藤賢汰】

多摩高校野球部の研究…ストライドの大きさで変わるベストなリード位置

 神奈川県屈指の頭脳が出した答えは、「15度または30度のリード」と「60度の傾き」だった。進学校として知られている県立多摩高校の野球部は、野球を研究テーマにしている。二塁から本塁へのベストな走塁もテーマに取り上げ、セーフになる確率が最も高いリードの位置と三塁ベースを蹴る時の体の角度を導き出した。

 多摩高校は野球を学問として捉え、競技人口減少を食い止める方法や部活動の地域移行の影響などについて調査、研究している。稲毛瞭介選手が選んだテーマは、「二塁から本塁までの走路における二塁走者の最適なリード位置はどこか」だった。

 部員16人のうち13人を対象に、二塁のリード位置とタイムの関係を実験した。直線を走るタイムが速い選手が必ずしもベースランニングも速いとは限らない結果が出たことから、リード位置に着目。稲毛選手が説明する。

「同じリードの取り方をすると、ストライドの大きさによって三塁ベースを蹴る時にタイムをロスする選手と、スムーズに回れる選手がいました。リードの位置を3か所設定して、タイムの違いを比較しました」

 実験では二塁ベースと三塁ベースを結んだ直線に対して、「0度」「15度」「30度」と3つのリード位置を設定した。0度は二塁と三塁を結んだ直線上。15度は、その直線と二塁ベースから左翼方向へ引いた直線の角度が15度になるライン上を指す。つまり、15度のリードは0度より後方(左翼方向)、30度はさらに後方にリード位置を取る形となる。

1月末には野球人口減少歯止めへの研究の一環として小学生対象の野球教室を開催【写真:伊藤賢汰】
1月末には野球人口減少歯止めへの研究の一環として小学生対象の野球教室を開催【写真:伊藤賢汰】

三塁ベースを蹴る時の体の角度は60度…トンボ使って練習

 タイムを比較した結果、二塁から三塁まで18歩未満で走る選手は、30度の角度が一番速かった。一方、18歩以上の選手は15度が最速。ストライドの大きさによって、ベストなリード位置は異なった。稲毛選手は、こう分析する。

「ストライドが小さい選手、今回の場合は二塁から三塁まで18歩以上の選手は小回りが利くので、リード位置に角度をつけなくてもスムーズに三塁を回れていました。それに対して、18歩未満でストライドが大きい選手は15度のリードでは角度が足りず、三塁ベースを蹴る時に動きが窮屈になってしまいます。リードの角度を30度にした方が減速を防ぐことができました」

 二塁から本塁への走塁で、もう1つ注目したのは三塁を蹴る時の体の角度。チーム内ではベースランニングが速い選手ほど、体を投手方向に傾けていた。最も速い選手の角度は56度だったという。

 そこで、チームでは三塁ベースのコーチャーズボックス寄りにトンボを持った選手が立ち、トンボに当たらないように二塁から三塁ベースを蹴って本塁へ走る練習を取り入れた。トンボの角度は60度。トンボに当たらなければ、体を60度投手寄りに傾けて走っていることになる。

 多摩高校の選手たちは中学時代に強豪チームでプレーしていたわけでも、体格に恵まれているわけでもない。長打や連打の確率は高くないため、1本の単打で二塁走者が本塁へ還れるかどうかが得点の鍵を握ると考えている。ベストなリード位置とスピードをロスしないベースランニングができれば、得点の確率は上がる。私立の強豪校に技術や筋力で他校に勝てない分、頭脳と練習の工夫で勝負する。

(間淳 / Jun Aida)

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