接点ゼロのメジャー選手に「打撃見てください」 育成年代に伝えたい“行動する勇気”

ライオンズベースボールアカデミーの綱島龍生コーチ【写真:球団提供】
ライオンズベースボールアカデミーの綱島龍生コーチ【写真:球団提供】

ライオンズアカデミーの最年少コーチ・綱島龍生氏…子どもたちへ「“チャンス”逃さないで」

 西武でプレーし、2021年に現役を退いた綱島龍生氏は、2023年からライオンズベースボールアカデミーのコーチを務めている。西武で現役を終わらせたいと、戦力外を通告されると引退を決断。第2の人生はアカデミーコーチという形で西武のユニホームに袖を通した。

 新潟・糸魚川白嶺高から2017年ドラフト6位で入団。高校は強豪校ではなく、甲子園出場経験もない。「自分を見つけてくれた西武で現役を終わろうと思っていました。寮生活も初めてで不安ばかりでしたが、先輩たちは優しくて、いろいろ教えてくれた。いい雰囲気で楽しく野球ができました」。

 4年間の現役生活で、1軍出場は7試合。まだ21歳だったが未練はなかった。引退後は地元の新潟に戻っていたが、アカデミーコーチの話が舞い込んできた。「将来は指導者になり、レベルの高いところで野球を教えたいと考えていたので、引き受けさせていただきました」。再び埼玉に向かう決意をした。

 人に教えるのは初めての経験で、最初は大変なことが多かった。「『野球ができる子が集まっているのかな』というイメージだったのですが、ボールが捕れない・投げられないという、本当に初心者の子もいて、どう教えていいのかわかりませんでした」。球を投げるのも捕るのも、自分は簡単にできる動作。それをどう伝えればよいのか、他のコーチの指導方法を見て学んでいったという。

 子どもたちと接して感じるのは、緊張もあるのか、自分から率先して話しかけてくる子が少ないということ。大人に話しかけるのは勇気のいることだと理解しているが、行動してみてほしいと話す。自身の現役時代も、話を聞けるチャンスは逃さなかった。

「秋山さん(翔吾外野手、現広島)がメジャーでプレーしていた時、帰国した時に室内で打っていました。あまり接点がなかったんですが『自分のためだ』と思って、『バッティングを見てください』と思い切って声をかけました。すると、快く見てくださりアドバイスをいただきました。今はYouTubeなどで映像も簡単に見られますし、上手な子は野球に対する考え方もすごいと思います。ただアカデミーには、プロを経験したコーチたちが間近にいるのですから、自分で勉強することも大切にしつつ、コーチの話も取り入れながらやっていってほしいと思っています」

地元で1年間アルバイト…野球界で培った礼儀が生きた

 地元に戻っていた1年間は、知人の居酒屋でアルバイトをしていた。高校卒業直後にプロの世界に飛び込んだため、アルバイトは初めての経験。客を相手に緊張することも多かったが、野球を通じて学んだ礼儀に助けられた。

「笑顔で挨拶をちゃんとすれば、みんな返してくれました。野球が好きなお客さんも多かったので、野球の話で盛り上がることも多かったです。子どもたちにも、挨拶はちゃんとするように言っています。野球を通して、生活面でも勉強になることが多いと思う。コミュニケーションの取り方も学んでいってほしいです」

 22歳でアカデミーコーチに就任。史上最年少のコーチとなったが、自身の経験を伝えながら、子どもたちとともに成長を続けている。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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