ミス1つで即交代は「選手のストレス」 9人野球で大旋風…“定位置固定”が導く利点

2018年夏準V、金足農業メンバーの佐々木大夢さん(右)と菊地彪吾さん【写真:本人提供、高橋昌江】
2018年夏準V、金足農業メンバーの佐々木大夢さん(右)と菊地彪吾さん【写真:本人提供、高橋昌江】

2018年夏準V…佐々木大夢さん、菊地彪吾さんが語り合った“金農旋風”の要因

 2018年夏の甲子園を席巻したのが、“金農旋風”だった。秋田の公立校、金足農業高は、エース・吉田輝星投手(現オリックス)を中心とした“9人野球”で、実績のある私立強豪校を次々と撃破。決勝では力尽きたものの準Vを果たし、全国的なブームを巻き起こした。主将を務めていた佐々木大夢さんと、右翼手だった菊地彪吾さんが3日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が開催するオンラインイベント「甲子園予備校」に出演し、レギュラー固定のメリットなど、当時を振り返った。

 公立の農業高校に全国準Vを達成するほどの有力メンバーが集まったきっかけは、秋田で恒例となっている「練習会」だった。

 中3で軟式野球部を引退後、高校で硬式野球を志す生徒を対象に、硬球に慣れることを目的に行われるもので、佐々木さんは「そこで知り合ったメンバーで『みんなで金足農業に行こう』という話になりました。吉田輝星は当時からすごい投手で、東北地方の他の強豪校からも誘いが来ていたはずですが、お父さんの母校である金足農業への進学を決めていました」と振り返る。

 菊地さんは「実は、僕は練習会に参加するまで、金足農業という高校の名前すら知りませんでしたが、こいつらとだったら(甲子園に)行けると思いました。あれがターニングポイントでした」と笑う。

 2001年以降、夏の甲子園大会の決勝に進出した公立校はこの時の金足農高と、2007年に優勝した佐賀北高の2校しかない。圧倒的な私立校優位である。しかし秋田大会に限ると2001年以降、昨年までの22度(2020年はコロナ禍で中止)のうち、公立校が18度代表となっている状況もある。

“金農旋風”は秋田大会5試合と甲子園大会6試合を合わせた計11試合を、3年生のレギュラー9人だけで戦った点でも注目された。エース・吉田は甲子園の準決勝まで全試合完投。決勝の大阪桐蔭戦だけは5回12失点で降板し、右翼守備に回った。菊地さんは「試合に出るのが当たり前だと、みんなが思っていました」と事もなげに言う。

「メンバー固定で、安心して野球をやらせてあげるのが大事」

 これを聞いて「貴重なヒントをいただきました」と膝を打ったのが、全国制覇3度を誇る滋賀・多賀少年野球クラブの監督で、イベントのホスト役を務める辻正人さんだ。強豪高校は部員100人以上で激しい競争を繰り広げているところが珍しくないが、「1つのミスで代えられることが選手のストレスになっている気がする」と指摘。そして、こう続けた。

「もちろん競争すべき時期もありますが、大会前になったらメンバーを固定して、安心して野球をやらせてあげるのが大事だと感じました。今の時代は、選手に負担をかけすぎないことも大事ですが、金足農業さんは安心感の中で戦っていたのではないか。だから攻めたプレーができる」

 佐々木さんも「9人だったからよかったのかもしれません。(レギュラーは)自分のプレーが勝ち負けに直結するので、逆にポジティブに、『もっと練習しなければ、技術を高めなければ』と、自然に練習をしたくなりました」と認める。各カテゴリーの指導者にとって、参考になる議論である。

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(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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