宮城大弥が戻ると「練習から違う」 引き締まった雰囲気…首脳陣が絶賛の“存在感”

オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】
オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】

オリックス・厚澤投手コーチが見た宮城大弥の“意地”

 改めて存在の大きさを知った。オリックス・厚澤和幸投手コーチは、復帰登板で事前の球数制限を超えて投げ抜き、チームに勝利をもたらせた宮城大弥投手に、エースの気概を感じ取っていた。
 
「マウンドに立った以上、どうしても5回は投げるという思いが強かった。その宮城の熱量に、監督が負けたんじゃないですか」
 
 50日ぶりの1軍マウンドとなった6月27日のソフトバンク戦(京セラドーム)。5月8日の楽天戦で左大胸筋を痛め、復帰に向けてのテスト登板は6月18日のウエスタン・リーグ、中日戦の1試合(先発で3回36球2安打無失点)のみ。故障明け登板という事情を考慮して、首脳陣が出した答えは「投球数60球」だった。

 先発ローテーション投手の責任を果たすためには、5回を投げ切るのが最低条件。クリアするためには、1イニング平均12球でまとめなければならない。初回、先頭の佐藤直樹外野手を3球三振に仕留めるなど3人で片付け、15球。2回はバックの拙守で走者を出したものの18球で切り抜け、3回も3者凡退で15球だった。

 しかし、計48球で迎えた4回にピンチを迎える。1死から山川穂高内野手に二塁打を許し、2死後、正木智也外野手に四球を与えた。甲斐拓也捕手を空振り三振に抑えたが、この回は22球を費やし、投球数は事前の制限を10球もオーバーしてしまった。
 
「その時は、交代するのか、続投するのかどっちかなというのがありました。ここは多分話し合いが来るんだろうな」と4回のマウンドを降りた宮城に、中嶋聡監督が伝えたのは「90球」までの続投だった。

オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】
オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】

「彼が居ると居ないのでは、練習から違います。信頼感、安心感がチームに出てきます」

「3回、4回……。4回かなと思っていた。どうしても行きたい、投げたいという顔をしていたので……」と試合後に中嶋監督は明かしたが、リミッターの解除は苦渋の選択だったことは間違いない。
 
 5回を打者3人15球で抑え、3点のリードを守ったまま「85球」でマウンドを降りてブルペン陣に後を託した宮城。最終的にはチームの連敗を2で止め、今季3勝目を手にした。再設定された球数より5球少なく投げ抜いた宮城に、左肩などの具合を確認してマウンドに送り出していた厚澤コーチは「90球を超えれば、どんな状況であろうと宮城を交代させていました」と明かす。
 
「3、4回で代えたら、宮城(の気持ち)もそうだし、引き継ぐのが若い投手陣ということも考えの中にはありました。宮城の気持ちとか、チーム事情とかを見ちゃいけないんだけど、それ以上にエースとしての自覚を感じました」と厚澤コーチは振り返る。宮城も「無理はしていないです。大丈夫だったので(5回も)勝負をしたかったんです」と語り、続投が無謀な賭けではなかったことを裏付けた。
 
「彼が居ると居ないのでは、練習から違います。信頼感、安心感がチームに出てきます。これを今、離脱している若い投手たちにもやってほしいんです」。厚澤コーチの言葉には重みがある。目立つことを好まず「裏のエース」を目指す宮城のプロとしての生きざまが、チームに与える波及効果に期待していた。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY