巨人28歳助っ人を“覚醒”させた球種 杉内Cも絶賛…「もっと早く投げておけば」
巨人・グリフィンを“進化”させたスライダー
■巨人 6ー1 DeNA(13日・東京ドーム)
巨人は13日、本拠地・東京ドームで行われたDeNA戦に6-1で勝利し、今季初の7連勝で単独首位の座を堅持した。先発した来日2年目フォスター・グリフィン投手が7回4安打1失点の快投で今季4勝目(2敗)を挙げた。助っ人左腕は、これで5試合連続ハイクオリティ・スタート(7イニング以上を投げて自責点2点以下)の無双ぶりだ。
磨いた1つの球種が、グリフィンの存在価値を急上昇させた。杉内俊哉投手チーフコーチは「スーパーピッチャーになりましたね」と最大限の称賛を送る。
メジャー通算7試合1勝0敗、防御率6.75だった28歳は、来日1年目の昨季、6勝5敗、防御率2.75をマーク。今季開幕から6月8日のオリックス戦(東京ドーム)までは、4試合1勝2敗、防御率5.59とパッとしなかった。ところが、6月15日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で持ち球にスライダーを加えた途端、以降の全5試合でハイクオリティ・スタートの大変身である。
「アメリカでも3種類くらいのスライダーを使っていたことがあるけれど、どれもいま一つで、投げなくなっていた。今季はカーブの調子が良くなくて、スライダーをまた使い始めたらハマったよ」と説明する。グリフィンにとってNPB使用球がスライダーを投げるのに適していたのかと思いきや、本人は「トラックマンで計測した数値を見ても、スライダー自体はアメリカで投げていた頃と全く変わっていない」と首を横に振る。
杉内コーチは「あのスライダーが球種に加わったのは、かなり大きいね。カウントを稼げて、空振りも取れて、勝負球にもできる。球種が1つ増えただけで、あれだけピッチングが変わるのだなと感心しています」と述懐し、「(スライダーを)もっと早く投げておけばよかったのに。どうして投げなかったんだろう?」と少しおどけながら首をひねった。
杉内コーチ自身も現役時代には、切れ味鋭いスライダーを武器に通算142勝を挙げた左腕だったが、「僕のスライダーとは違いますね。グリフィンは腕の位置が低いから、“横曲がり感”が強い。相手打者にとっては、一瞬ボールに見えた球がストライクゾーンに入ってくる感じではないかな」と評した。
打っても阿部監督絶賛の適時二塁打「俺のゴルフショットより飛んだ」
「三振を取れるようになりました。今、ウチの投手陣で三振を取るペースは一番速いのではないでしょうか」と杉内コーチが指摘する通り、今季規定投球回数にはまだ遠いグリフィンだが、奪三振率9.00はNPBトップレベルに相当し、特にスライダー導入後の5試合に限ると10.24に達する。
この日のDeNA戦でも、グリフィンが投じた110球中、48球(43.6%)のストレートに次いで、スライダーが21球(19.1%)を占めた。2-0とリードして迎えた4回、先頭のタイラー・オースティン内野手に、そのスライダーが真ん中に入ったところを左翼席に運ばれ、なおも1死一、二塁の1打同点機を背負ったが、伊藤光捕手に外角低めのスプリットを打たせ、遊ゴロ併殺に仕留めた。「これといって調子が良かった球種はないが、走者を出した時に、意図したボールを投げることができたことが良かった」とうなずいた。
打撃でも自ら、6回に野手顔負けのセンターオーバーの適時二塁打を放ち、「(阿部)監督が『俺のゴルフショットより飛んでいた』と言ってくれたよ」と破顔一笑。昨季4安打中2本が長打(二塁打、三塁打が1本ずつ)で、今季も2安打目が長打となり、相手投手は神経を使うことになりそうだ。
投打に底知れないポテンシャルをうかがわせるグリフィンは、巨人が混戦のペナントレースから抜け出す鍵を握っているに違いない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)