歴史的快進撃も…「悔しいレベルでない」 かからなかった“声”、DeNA初代主将の落胆

DeNA時代のアレックス・ラミレス氏と石川雄洋氏【写真提供:産経新聞社】
DeNA時代のアレックス・ラミレス氏と石川雄洋氏【写真提供:産経新聞社】

石川雄洋氏は2017年のCS、日本Sは選手登録されなかった

 DeNAは2017年にリーグ3位からクライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜き、ソフトバンクとの日本シリーズへと駒を進めた。日本一となった1998年以来19年ぶり、DeNAとしては球団創設初の日本シリーズだった。石川雄洋氏はこの年、63試合に出場していたがCS、日本シリーズとともに選手登録される機会はなく、「残念だった」と当時の心境を吐露した。

 DeNAは2017年にアレックス・ラミレス監督のもと2年連続でCSへ進出。阪神、広島を破り球団初の日本シリーズ進出を決めた。13年目だった石川氏は63試合に出場。打率.246という数字は物足りない印象だが、四球や犠打、進塁打など“黒子”に徹してチームに貢献している自負はあった。しかし、10月に迎えた大一番で選手登録されることはなかった。

「もはや呼ばれずに悔しいとかのレベルではなかったです。当時はどちらかといえば打撃のチームでしたが、繋ぎの打者はそこまでいなかった。ファウルで粘るとか、四球を選ぶとか、走れる選手が少なかった」

 石川氏は派手さはないが、相手にとって嫌がられるような選手でもあり、バントなどの小技にも長けていた。スピードもあり、何より攻守において献身的な姿で仲間を鼓舞する存在だった。
 
「もちろん監督の考えもあると思いますし、若い選手に経験させることは大事です。でも僕自身はチームとして需要はあったかなと。代打の切り札だった後藤(武敏)さんも僕と同じような扱いでした」

元DeNA・石川雄洋氏【写真:湯浅大】
元DeNA・石川雄洋氏【写真:湯浅大】

練習場所もパブリックビューイングで“奪われた”

「いつでも準備しておけ」と言われていたが、声がかからない。CS突破の祝勝会のビールかけも声はかからなかった。「シーズンを通して貢献したとは思っていましたが、そこにも呼ばれなかったのは残念でした」。

 それでもポストシーズンの期間中は、万が一に備えて横須賀市の球団施設で練習を続けていた。しかし、今度は同所でのパブリックビューイング開催が決定した。「練習しなくていいんですか?」。問いただすと「休みでいい」。まさかの返答だった。

「帯同している選手に何かあったらどうするんですか、となりますよね」。残留している選手らで横浜スタジアムの室内練習場を開けてもらい、ひっそりと練習したという。

 まさかの扱いを受けたこともあり、心の平静を保つのは困難だった。チームの戦いぶりは「ちゃんと見ることはできませんした。もちろん、仲間には頑張ってほしかったけど……。練習はしていましたけど、残っているメンバーの中には僕と同じ思いだった人もいたと思います」。チームの歴史的快進撃の裏で、寂しさと屈辱的な思いを味わった2017年シーズンだった。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

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