キャッチボールの再現性低い子は「大成しない」 “18.44”を近くする名門の投手育成術

阪神ドラフト2位指名の報徳学園・今朝丸裕喜【写真:加治屋友輝】
阪神ドラフト2位指名の報徳学園・今朝丸裕喜【写真:加治屋友輝】

「キャッチボールはブルペン以上に大事」…報徳学園が取り組む“3種類の距離”の練習

 意図するボールを投げるためには、地道な基礎練習が必要になる。毎年のように全国レベルの投手陣を形成する高校野球の強豪、兵庫・報徳学園。投手部門を担当する礒野剛徳投手コーチは「キャッチボールの再現性が低い投手は大成しない。ブルペン以上に重要だと思っています」と、好投手になるための“条件”を口にする。少年野球の指導にも参考になる、練習の実践方法を紹介してもらった。

 報徳学園は昨年、阪神からドラフト2位指名を受けた今朝丸裕喜、U-18高校日本代表で主将を務めた間木歩のダブルエースで選抜準優勝を果たすなど、これまで多くの好投手を輩出している。そんな投手陣を指導するのが、野球部長も務める磯野投手コーチだ。投手育成については「一番は体づくりがメイン。体と技術の割合でいえば8対2。ある程度のフィジカルがないと、球速など数値を追うことはできません」と指摘する。

 スクワット、デッドリフトなどのウエートトレーニングでは、個々の数値を測り全員で共有する。例えば球速150キロを投げるために必要な数値を明確に提示し、期間内でのクリアを目指していく。簡単に達成できる数値ではないが「150キロはあくまで動機付け。モチベーションも上がり、目指しやすい。速い球でも打たれる時代なので、残り2割の技術も大事になります」。

 細かな技術練習も大切だが、最も重要視しているのがキャッチボールだという。チームではショート、ミドル、ロングと距離に応じて目的が異なるキャッチボールを展開。約20メートルのショートでは、(右投手の場合)対角線となる相手の右肩付近に強いボールを投げ込む。

 約60メートルのミドルでは顔付近に浮き上がるボールを。そして、90〜100メートルのロングでは相手の肩幅から左右1メートルのラインを外さず、ノーバウンドで投げる意識を持たせる。

報徳学園投手陣のキャッチボールの様子【写真:橋本健吾】
報徳学園投手陣のキャッチボールの様子【写真:橋本健吾】

3種類のキャッチボールで「投げミス」が少なくなる

「近い距離ではクロスに投げる意識ですが、低めは狙わなくていい。外角低めに狙いすぎると、肘や上半身が前に出てしまいます。ブルペンやマウンドでは、傾斜があるのでなおさらです。3種類のキャッチボールがしっかりできるようになれば、ある程度の形ができる。例年、メンバーに入る投手ほどキャッチボールの再現性が高く、投げミスが少ないです」

 異なる距離で精度の高いキャッチボールができれば、「想像以上に“18.44”(マウンドと本塁との距離)は近く感じます」と礒野投手コーチは語る。球速、制球、変化球を求めるの大切だが、まずは基本練習で“自らのボールを扱えるようになる”ことが成長の近道かもしれない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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