“強制送還”告げられ「俺、なんかしました?」 勝ち取った吉報…糧にする1軍での恐怖

中日・松木平優太【写真:木村竜也】
中日・松木平優太【写真:木村竜也】

5年目を迎えた中日・松木平優太、支配下勝ち取った昨季に得た“教訓”

 育成契約から這い上がった21歳には、真価の問われる1年になる。中日の松木平優太投手は昨年7月に支配下登録を勝ち取り、1軍で勝ち星を挙げた。プロ5年目の今季は、先発ローテーションの一角を担うことが期待される。喜びも怖さも味わった刺激的な2024年の経験を血肉に変え、まだ肌寒い沖縄のブルペンで汗を流す。

 大阪・精華高から2020年育成ドラフト3位で入団。4年目の昨季は7月時点で、2軍で14試合に先発して防御率1.84、ファーム両リーグ最多の9勝を挙げていた。圧倒的な成績を残していただけに「2軍では打たれる気がしませんでした。なんで早く1軍に呼ばれないんだ。遅いよ」。そう思うほど手応えはあった。

 吉報は突然訪れた。敵地での2軍のオリックス戦のため大阪入りし、登板を翌日に控えた日7月上旬、当時の井上一樹2軍監督(現1軍監督)から急に呼び出しがかかった。「名古屋に帰れ」のひと言。全く意図が理解できず、思わず「何かしましたか?」と恐る恐る尋ねた。????責も覚悟した。すると指揮官から「ちげーよ。俺から旅立てよ、支配下だ! 1軍で投げてこい!」とまさかの昇格が告げられた。一瞬戸惑ったが、待ちに待った通達に心躍った。

「死ぬ気で投げてきます!」。井上監督の気持ちのこもった熱い“通達”に返事はひと言で十分だった。

2勝を挙げるも見えた弱さ「気持ちで負けていました」

 2試合目の先発となった昨年7月31日のヤクルト戦(バンテリンドーム)で、6回4安打無失点の好投を見せて念願の1軍初勝利。10月にかけて8先発のチャンスをもらったが、終わってみれば2勝4敗、防御率3.70。8月以降は大量失点も続いた。最初はファームでの勢いそのままに、ただがむしゃらに腕を振れば結果は出た。しかし、少しずつ考える隙間ができてくると、松木平の心に弱気が芽生えた。

「気持ちで負けていました。打たれたらどうしよう、2軍行きだというマイナスな考えが出てきました。ファームの時は『来いよ』って感じで強気で投げられたのですが、1軍では相手打者も有名な人ばかり。そこで怖いなと思ってしまったんです。それが良くなかったですね……」

 メンタルの未熟さに気づかされた。だからこそ春季キャンプでは自らを追い込むことに決めた。キャンプ第2クールに入った2月6日、午前中と午後の2度ブルペン入りし、合計95球を投げ込んだ。指には血豆もできていたが、それでも自分の気持ちに負けぬよう投げ続けた。

 今季の目標は「己に勝つ」。帽子のつばには「真向勝負」の4文字を刻む。絶対に逃げず、強い心で臨み、支配下を勝ち取った時以上の喜びを重ねていく。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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