阪神20歳がプロ初勝利を逃したワケ カブス制圧も広島の“壁”…魅力満載も露呈した課題

カブスとのエキシビションマッチで5回パーフェクトの快投
■広島 2ー0 阪神(30日・マツダスタジアム)
弱冠20歳の若虎が、魅力と課題の両方を見せた。高卒3年目の阪神・門別啓人投手は30日、敵地マツダスタジアムで行われた広島戦で今季初先発するも4回1/3、2失点。チームは0-2で敗れ、門別はプロ初勝利を逃し、黒星を喫した。
プロ入り後1軍では未勝利の門別だが、潜在能力に対する期待は非常に高い。2022年ドラフト2位で東海大札幌高から入団すると、早速1年目の9月に1軍デビュー(2試合登板、防御率3.38)。2年目の昨季は5試合(先発2試合)0勝2敗、防御率4.50だった。今月15日には、来日中だったカブスとのエキシビションマッチに先発して5回パーフェクトの快投を演じ、開幕ローテの座を射止めた。
現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「門別の最大の魅力は、真っすぐの威力です。特に右打者の内角を鋭くえぐる“クロスファイヤー”を、どんどん投げていける度胸と制球力を持っている。もはや阪神では期待の若手というより、先発ローテの一角として働かなくてはならない立場だと思います」と評する。
この日、両チームの先発はともに左腕で、お互い序盤の3回までスコアボードに「0」を並べていたが、内容は対照的だった。広島先発の森翔太投手がテンポよく凡打の山を築いていくのに対し、門別は毎回走者を背負いながらしのいだ。4回終了時点で、森の球数がわずか32球だったのに対し、門別は約3倍の90球に達していた。最終的に、森は8回途中まで92球で乗り切り、門別は5回途中111球で降板した。
「阪神打線は森に対し、早いカウントから真っすぐに照準を合わせて打っていきましたが、とらえきれず凡打を重ねました。一方、広島打線も門別に対し、同じように真っすぐを狙っていきましたが、前へ飛ばずにファウルが多くなり、球数が増えていきました」と野口氏は解説する。
二俣に11球、秋山に12球…広島打線の徹底した粘りに苦戦
広島の各打者の粘りも目を引いた。3回1死一塁で打席に立った二俣翔一内野手は、カウント3-1から6球連続ファウルで粘り、11球目を選んで四球で出塁。4回先頭の秋山翔吾外野手は8球もファウルを打ち、12球目に四球を選んだ。野口氏は「カープは昔から、野手全員でこうしていこうと決めて、それを徹底していけるところがチームカラーですから」とうなずく。
結局、球数が増えた門別は4回無死一、三塁でベテランの菊池涼介内野手に低めのスライダーを拾われ、先制左犠飛を許す。5回1死一、二塁となったところで降板し、2番手の石黒佑弥投手が適時打を浴びたことから、失点は「2」となった。
野口氏は「この日の門別はフォークが、相手打者に振ってもらえるコースにいっていなかった。はっきりしたワンバウンドとなって、見送られることが多かったです。梅野(隆太郎捕手)は決め球に苦労したと思います。もう少し振ってもらえるところに収まっていれば、それを相手に意識させて、早いカウントの真っすぐで凡打を稼ぐこともできたはずです」と門別の課題を指摘する。
とはいえ、決して悲観するような内容ではない。野口氏は「フォークの精度などは、次回登板までに調整できる部分です。それに、決め球を投げる際に少しりきんでいたのかもしれない。そういったピッチングのコツは、経験を積めば自然に覚えていくものです」とした上で、「目を見張るボールがたくさんありました。あとは経験値だけではないでしょうか」と目を細めた。
確かに、2回2死一塁で菊池涼をカウント1-2から見送り三振に仕留めた外角低めいっぱいの145キロのストレートは、うなりを上げているように見えた。
藤川球児監督率いる新生タイガースを象徴するような活きのよさを見せた門別。まずは1日も早く、プロ初勝利が待たれる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

