広島21歳の“対応力”を専門家絶賛 レギュラーに必要な要素「首脳陣はそこを見ている」

広島・田村俊介【写真:栗木一考】
広島・田村俊介【写真:栗木一考】

広島4年目・田村、打っては2安打、守備では美技連発

■広島 1ー0 巨人(12日・マツダスタジアム)

 広島21歳のホープがいよいよ本格化の気配を見せている。広島の田村俊介外野手が12日、マツダスタジアムで行われた巨人戦に「1番・一塁」で出場。3回に三塁打を放つと、続く矢野雅哉内野手のスクイズで決勝のホームを踏んだ。守っても美技を連発し1-0の勝利での首位浮上に貢献。現役時代にヤクルト、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「非常によくやっていると思います」と高く評価した。

 バットで魅せたのは3回1死。カウント2-2から外角低めのフォークを捉えると、打球は中堅・ヘルナンデスの頭上を越えた。野口氏は「凄い当たりで、よく伸びた。(相手投手の)赤星みたいなタイプは(球種が多くて)対応するのが難しいけど、追い込まれて落ちる系の難しいボールをうまく打った」と解説。「二塁打と三塁打じゃ全然違う。三塁まで行ったのも良かったですよね」と続く矢野のスクイズにつながった走塁面も称賛した。

 守備では初回2死一、三塁、キャベッジの一塁線への鋭い打球を逆シングルで好捕。そのまま一塁ベースを踏んで立ち上がりのピンチを脱してチームにリズムをもたらした。最大の見せ場は先制した直後の4回無死二塁だ。岡本の一塁ファウルゾーンへの飛球を背走しながら捕球。体勢が崩れかかったが、素早く体を反転してタッチアップのスタートを切った二塁走者・吉川を三塁で刺した。

 吉川の判断について野口氏は「田村が向こう向きで捕っていたし、いい体勢でもなかったから、あそこは(三塁を)狙っていいいと思う。ほんのちょっとでもミスしたらセーフ。アウトになる確率の方が低いプレー」と説明。「ここしかないというところに投げましたからね。あれは田村を褒めるしかない」とピンチを脱したビッグプレーを称えた。

出場7試合連続安打で打率.400、得点圏打率.667、OPS1.021

 外野手登録の田村の動きについては「本職は外野手でしょ。外野のフライと内野のフライでは角度や見え方も違うし難しいはず」と驚きを隠さない。愛工大名電時代は最速145キロ左腕としても注目された強肩を生かした三塁への矢のような送球は「投げる方は元々ピッチャーで凄いボールを投げてましたから」としつつ「どうにかして試合に出たいという姿勢が出ている」と評した。

 2021年ドラフト4位で入団し、1年目は2軍で打率.185、0本塁打。2023年は故障もあり1軍10試合出場にとどまったが、打率.364(22打数8安打)をマークした。2024年は3月6、7日の欧州代表戦で「侍ジャパン」に選出。ただ、初の開幕1軍を勝ち取ったシーズンでは37試合出場で打率.198、0本塁打、5打点と期待を裏切る結果となった。

 4年目の飛躍を期す今季は、開幕3戦目の3月30日の阪神戦で途中出場して2安打。6日のDeNA戦からスタメンに定着すると、この試合では6回にも内野安打を放って2試合連続マルチ安打と確かな成長を示している。これで出場7試合連続安打。規定打席にこそ達していないものの打率.400、得点圏打率.667、OPSは驚異の1.021をマークしている。

「去年までは期待されながら、いつも結果が出ていなかった。今は凄くいい状態。ただ、これが続けばいいけど維持できるわけじゃない」と野口氏はいう。「絶対に調子が悪くなる時がくる。立場を確固たるものにするには、調子が悪くなった時にどうやって乗り越えるかにかかっている。首脳陣もそこを見ている」。ついに殻を破ってレギュラーをつかむのか、これからの対応力に注目したい。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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