好投後にベンチ外…“事前察知”した戦力外 元中日右腕が通告前に下した決断と葛藤

昨季限りで現役を引退した元中日の阿知羅拓馬氏【写真:荒川祐史】
昨季限りで現役を引退した元中日の阿知羅拓馬氏【写真:荒川祐史】

20年まで中日でプレーした阿知羅拓馬氏「シーズンの早い段階でクビかなと…」

 戦力外となった選手の多くは、通告の兆候を感じるという。2020年限りで現役を引退した元中日投手の阿知羅拓馬氏も、そのひとり。もちろん1日でも長く生き残ろうともがいたが、引退となればすぐにセカンドキャリアに直面する。プロ人生の“最終盤”をどう過ごすべきか――。葛藤しながらも、素早く決断した。

「シーズンの割と早めの段階で、クビになるのかなという感じはありました」

 プロ7年目の昨季、開幕から2軍で過ごしていた阿知羅氏は敏感に変化を感じ取っていた。明らかにチーム内の優先順位が下がり、月に2、3度しか登板機会は来ない。マウンドで完璧に抑えても、翌日はベンチ入りメンバーから外れたこともあった。「僕も7年間やってきて、どういう人がクビになるかを見てきましたから」。その“前例”に、自分は当てはまっていた。

 ドラフト会議で新しく選手が入ってくれば、その分出ていく選手がいるのは当たり前。中日では前年の2019年オフ、投手がひとりも戦力外になっていなかった。「その分、今回は投手が多めになるのかな」と安易に想像できた。

 こんな計算、できればしたくない。「野球をやってるときだけは、ピッチングのことだけを考えられました」。だが一歩グラウンドを出ると、否が応でも頭をよぎる。戦力外になるのは、少なく見積もっても投手中心に6人以上はいるはず……。

「僕も頭数に入れないと、戦力外の人数が合わない」

 昨秋には、そう自分の中で“察知”ができた。ウエスタン・リーグでは防御率2.19で終え、マウンドでやれることはやった。だからこそ、戦力外通告された後も考え始める必要があると思った。2020年はコロナ禍で開幕が延期され、シーズン終了も後ろ倒しに。「戦力外になってから次を考えていたら、すぐ年が明けちゃうなと」。冷静に、現実を直視した。

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