大阪桐蔭、“個性派集団”をどうまとめる? 歴代主将2人が語るチーム統率術

大阪桐蔭元主将の廣畑実さん(左)と水本弦さん【写真:白永崇大】
大阪桐蔭元主将の廣畑実さん(左)と水本弦さん【写真:白永崇大】

「ミノルマン」こと廣畑実さん「うるさく言い過ぎました」

 大阪桐蔭高野球部の歴代主将2人が「主将論」を語った。顔を合わせたのは、「ミノルマン」の愛称で親しまれYouTubeや野球塾で知識や技術を伝えている廣畑実さんと、阪神・藤浪晋太郎投手の同級生で2012年に春夏全国連覇を果たした水本弦さん。「勝つために嫌われても構わない」と思っていた廣畑さんに対し、水本さんは「嫌われたくなかった」と明かす。1学年差の2人主将の考え方は対照的だった。

「歴代の大阪桐蔭の中でも個の能力が高い学年でした。我が強い選手も多かったので、よく衝突していました。チームをまとめるため、勝つためなら嫌われても構わないと考えていました。実際、めちゃくちゃ嫌われていたと思います」

 11年前に大阪桐蔭の27代目主将を務めた廣畑さんは当時を回想する。同級生ではオリックス・山足達也内野手や元阪神・西田尚斗さんがプロ入りし、JR東海でプレーした廣畑さんのように多くの選手が社会人でプレーしている。主将として仲間を同じ方向に導くためには嫌われ役も厭わなかったというが、個の強い選手たちをまとめる難しさを痛感した。ノックでミスが出ると、送球した選手と捕球する選手がどちらの責任かで言い合いになることもあったという。

「どの選手も自分に自信を持っているし、勝ちたいと思って練習していました。ただ、その気持ちが強すぎて衝突することも多かった。強いチームと勝てるチームは違うと知りました。いい選手が集まっていても勝てるとは限りません」

 廣畑さんは毎日のようにミーティングを重ね、チームが勝つためには一定の犠牲が必要だと伝えた。ただ「今考えると失敗だったかもしれません」と口にする。個が強い選手の力を引き出すには適度に自由を与える必要があったとし、「決まり事でしばりつけ過ぎると反発してしまいます。うるさく言い過ぎました」と振り返る。そして「その辺りは水本が上手かった」と1学年下の28代目主将、水本さんの手腕を称えた。

甲子園春夏連覇の主将・水本さん「その場の空気を考えるようにしていた」

 水本さんは廣畑さんと対照的に「嫌われたくなかったですね」と振り返る。性格的にもチームを鼓舞して引っ張るタイプではなかったため、西谷浩一監督の意図をいかにチームに浸透させるかを考えた。

「チームメートには少し強い口調で伝えたりユーモアを交えたり、その場の空気を考えるようにしていました。監督と選手の橋渡しをする役割です」

 西谷監督が怒っている時は、仲間には敢えて冷静に語りかけ、監督が褒めた時はチームの雰囲気が緩まないように厳しい言葉を使った。水本さんは主将だった3年時、藤浪や1学年下の西武・森友哉捕手らとともに甲子園で春夏連覇を成し遂げている。

 周囲からは「勝って当たり前」と見られがちな大阪桐蔭。チームの先頭に立つ主将は想像以上の重圧と戦い、試行錯誤を繰り返している。

(間淳 / Jun Aida)

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